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児童発達支援・放課後等デイ


読みもの

保護者アンケート調査から見る、放課後等デイサービスを利用する理由と支援への満足度

解説 2022.05.16

ヴィストカレッジディレクターの林原です。

前回は、「放課後等デイサービスの課題」に関してお話しさせていただきました。

2012年に放課後等デイサービスが創設され、2020年まで全国の放課後等デイサービス事業所数が5倍以上(厚生労働省、2020)と急増しているとともに、「テレビだけ見せている」療育的支援を行わない事業所が国会で問題になりました。

2018年の報酬改定で「支援の質の向上」に関して、理学療法士等を配置した事業所が報酬として高く評価される仕組みが作られました。

今後の報酬改定等でも2020年10月の「障害児通所支援の在り方に関する検討会報告書」では「発達支援の質を上げていくことが重要」と示されたように、「支援の質」に関して議論が進む予想されます。

それでは、「支援の質」とはなんでしょうか?「支援の質が高い事業所」とはどのような事業所でしょうか?

2020年に「放課後等デイサービスの事業所のあり方に関する調査」を実施いたしました。今回はその調査結果をご報告させていただきます。

① アンケートの方法に関して

(1) 対象:

富山県の放課後等デイサービス利用している通常学校の特別支援学級、通常級に在籍している小学生から高校生の子どもをお持ちの保護者

(2) 調査の実施:

「放課後等デイサービスの事業所のあり方に関する調査」について、無記名自記式質問紙調査を実施した。

調査の実施時期は令和3(2021)年2月から令和3(2021)年3月である。富山県内で調査対象の在籍している10か所の放課後等デイサービス事業所に調査対象への質問紙の配布を依頼した。

(3) 質問紙の内容:

Q1からQ22まで質問紙にて回答を求めた。

Q1からQ6は回答者(保護者)に関して、Q7からQ11は子どもに関して、Q12からQ15は利用している放課後等デイサービスに関して、Q16からQ17は放課後等デイサービスの活動に関して、Q18は利用している放課後等デイサービスの総合満足度、Q19からQ20は子どもの支援に関して、Q21からQ22は保護者支援に関しての回答を求めた。

② アンケートの結果

(1) 回収率:

配布数150部のうち、回収数89部(回収59.3%)、有効回答数88部(有効回答率98.9%)。

(2) お子さんに関して:

子どもの性別に関しては、70名が男性、18名が女性であった。(図1参照)

図1:子どもの性別


学年に関しての内訳は小学校3年生が最も多く、校種では、小学校が最も多く全体の80%。(表1参照)

表1 子どもの学年について

(3) お子さんに関する悩み

学校の場面と家庭の場面をそれぞれ尋ねています。(表2参照)

表2 お子さんの悩みに関して

・学校の場面で最も多かったのは、「集団での指示を聞くことが苦手」54.5%、次いで「不注意(忘れ物が多いなど)」50.0%、「友達とうまくかかわれない」44.3%、「特定の学習が苦手(書き)」43.2%。

・家庭の場面で最も多かったのは、「後片付けが苦手」58.0%、次いで「宿題を取り組むまでに時間がかかる」44.3%、「切り替えが苦手(次の活動に移るのが苦手)」43.2%、「こだわりが強い」43.2%。

(4) 放課後等デイサービスに関して

放課後等デイサービス事業所を利用する理由をたずねた項目です。

最も多かったのは、「子どもの適切な療育」85.2%、次いで「子どもの居場所作り」58.0%、「子どもの余暇の充実」43.2%、「保護者が働くため」27.3%であり、「その他」の内容として自由記述で「子どもの友達作り」「子どものことを相談できる場所」「自分を理解してくれる人のところで穏やかに過ごして欲しいから」などの記述があった。(表3参照)

表3 放課後等デイサービスを利用する理由

(5) 放課後等デイサービスの総合満足度

現在利用している放課後等デイサービス事業所の総合満足度をたずねた項目です。

「非常に満足している」48.9%、「やや満足している」38.9%を合わせて87.5%であり、利用している保護者が概ね満足している様子が伺えます。

(6) 満足している支援内容

表4は満足している支援内容を、「子どもの支援」「保護者の支援」を各項目ごとに「非常にそう思う」「どちらかというとそう思う」「どちらでもない」「どちらかというとそう思わない」「全く思わない」の5件法で尋ねた質問紙の集計結果です。

表4 満足している支援内容

(7) さらに求める支援内容

表5は満足している支援内容を、「子どもの支援」「保護者の支援」を各項目ごとに「非常にそう思う」「どちらかというとそう思う」「どちらでもない」「どちらかというとそう思わない」「全く思わない」の5件法で尋ねた質問紙の集計結果です。

表5 さらに求める支援内容

放課後等デイサービスを利用する理由は「子どもの適切な療育」が最も多い

今回のアンケートの結果では、今利用している事業所の「総合満足度」が「非常に満足している」48.9%、「やや満足している」38.9%を合わせて87.5%と概ね満足をされていることがわかりました。

また、利用される理由を尋ねた質問では「子どもの適切な療育」(85.2%)、次いで「子どもの居場所作り」(58.0%)、「子どもの余暇の充実」(43.2%)、と子どもの支援に関する項目に多くの方が回答されました。

次回は、このアンケート結果を元に、「放課後等デイサービス事業所のこれからのあり方」を「支援の質」も関連させて考えていきます。

続き:これからの放課後等デイサービスに求められること


[引用元・参考文献]
厚生労働省(2020)「令和2年度版厚生労働白書」
厚生労働省(2021)「障害児通所支援のあり方に関する検討会報告書」
林原(2022年),放課後等デイサービス事業所のあり方に関する研究―通常学校に在籍する児童生徒の保護者への質問紙調査から-,富山大学院人間発達科学部発達教育専攻教育修士論文

執筆者:林原洋二郎
ヴィストカレッジ ディレクター。公認心理士。富山大学大学院人間発達科学部修了(教育士)、金沢大学子どもの心の発達研究センター研究員。富山福祉短期大学非常勤講師。物流企業の営業職、広域通信制高校センター長を経て現職。発達障害の就労支援と発達に特性を持つ子どもの療育(発達を促し、自立して生活できるように援助すること)に従事。『放課後等デイサービスにおけるプログラミングを利用した自己肯定感を育む支援』(日本教育工学会論文誌/2021)など多数執筆。

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