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児童発達支援・放課後等デイ


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これからの放課後等デイサービスに求められること

解説 2022.05.21

ヴィストカレッジディレクターの林原です。

前回は、2021年に実施した「放課後等デイサービスの事業所のあり方に関する調査」の結果に関してのご報告させていただきました。

放課後等デイサービス事業所に通所した理由で多かったのは

「子どもの適切な療育」85.2%
「子どもの居場所作り」58.0%
「子どもの余暇の充実」43.2%

でした。


また、お子さんの悩みで多かったのは、
●学校の場面
「集団での指示を聞くことが苦手」54.5%
「不注意(忘れ物が多いなど)」50.0%
「友達とうまくかかわれない」44.3%
「特定の学習が苦手(書き)」43.2%

●家庭の場面
「後片付けが苦手」58.0%
「宿題を取り組むまでに時間がかかる」44.3%
「切り替えが苦手(次の活動に移るのが苦手)」43.2%
「こだわりが強い」43.2%

という結果になりました。

今回はその調査結果を踏まえ、これからの放課後等デイサービスに求められる支援を考察していきます。

①学校生活での課題に関する支援

「放課後等デイサービスの満足する支援内容」の結果を見ると、「集団行動の支援」に最も多い79.5%の保護者が「非常にそう思う」「どちらかというとそう思う」に回答をしていました。

こうした回答の背景には、「学校生活での悩み」において「指示理解(54.5%)」、「不注意(50.0%)」「落ち着きがない(29.5%)」といった項目に多くの回答が集まっている点とも関係すると思われます。

感覚等の特性を持っている子どもたちにとって、学校の集団行動はとても苦手です。

一方で放課後等デイサービスでは、3〜9名程度で発達の特性を理解したスタッフが個別に支援が可能な環境を作れるため、子どもの特性に合わせ、楽しく集団活動を行うことができます。

集団行動が苦手だったり、感覚等の特性を持つ子どもたちには、放課後等デイサービスで、楽しみながら集団活動について学べる支援が求められています。

ヴィストカレッジの集団イベント(ビンゴ大会)の様子

②家庭生活における困難さの支援

「放課後等デイサービスの満足する支援内容」の結果を見ると、「日常生活の支援」に76.2%の保護者が「非常にそう思う」「どちらかというとそう思う」に回答をしていました。

回答した背景には、「家庭生活での悩み」の問いに対する結果の「後片付けが苦手(58.0%)」、「宿題に取り掛かるまでに時間がかかる(44.3%)」から一側面がうかがえます。

「保護者の勤務の状況」を尋ねた質問では、64.8%が共働きと回答し、母親が回答者として多いことからも、育児と仕事の時間的バランスが難しい様子が伺えます。

放課後等デイサービスでは、家庭生活に応用できる生活スキルの獲得を目指す支援が求められます。

ヴィストカレッジのイベント(ピザづくり)での調理体験の様子

③ 友人関係に構築の困難さに関する支援

「放課後等デイサービスの満足する支援内容」の結果を見ると、「イベント・行事活動」に76.2%、「余暇の充実」に75.0%の保護者が「非常にそう思う」「どちらかというとそう思う」に回答をしています。

その背景は、「学校での悩み」に関する結果「友達と関われない(44.3%)」や、「家庭での悩み」に関する結果「友達の話の中に入るのが苦手(34.1%)」「仲のいい友達がいない(29.5%)」から一側面がうかがえます。

放課後等デイサービスでは、友人関係が構築しやすい環境があります。そこには2つの背景があります。

1つ目は放課後等デイサービスの人員的な環境です。

児童指導員等の専門スタッフが手厚く配置されるため、子ども同士の関わりにスタッフが介入しやすくなっています。喧嘩の仲裁等などのネガティブな側面の介入だけでなく、発達特性を理解したスタッフが遊びやイベント活動を通した関わり合いに介入し、友人関係構築の支援を行うことも可能です。

2つ目は、子どもの発達特性です。

「本人たちの興味のある領域で展開する余暇活動は、共通の興味を分かち合う相手との仲間関係や活動拠点が形成されやすく、基盤作りの有効な手段となりうる」(田村ら,2014)というように、自閉症スペクトラム障害などで興味関心が限定される子どもは多くいます。

そのため、同じ興味関心をもつ子ども同士が、お互いに興味のある「もの」を通して友達関係を構築しやすく、そうした環境が放課後等デイサービスにはあります。

ヴィストカレッジにてゲーム「マインクラフト」を利用した支援の様子

④作業療法士など、他職種と連携した支援

「放課後等デイサービスのさらに充実を求める支援内容」の結果を見ると、「学習支援」に72.7%、「運動やスポーツの支援」に67.0%の保護者が「非常にそう思う」「どちらかというとそう思う」に回答をしています。

また、表1は「総合満足度」に対して「子どもの満足している支援内容」のどの項目が影響を与えているかを分析した結果、「学習支援」が影響していることが分かりました。(※1)

表1 総合満足度の結果

その背景として「学校での悩み」では、「特定の学習が苦手(書き) (43.2%)」、「特定の学習が苦手(読み)(31.8%)」と学習の課題を回答した保護者も多いことがあげられます。

読み、書きの支援に関しては、背景として認知面の課題が大きく、作業療法士の介入が効果的であると考えられます。

倉澤ら(2020)は作業療法士の読み書き支援の介入に関して「不器用を呈する学齢期の児童においては、書字動作の訓練や目と手の協応動作訓練などを行っている。作業療法士が有する知識と技能は、発達障害が疑われる児童の就学支援に寄与することが期待される」と作業療法士の学習支援への介入の有効性を述べています。

「放課後等デイサービスを利用する理由」を保護者に尋ねた質問では、85.2%が「適切な療育」と回答しています。他職種と連携した質の高い支援が「適切な療育」として求められていることがうかがえます。

ヴィストカレッジの学習支援の例

(※1)表1「総合満足度」に対して「子どもの満足している支援内容」のどの項目が影響を与えているかを重回帰分析で検証した結果であるが、「学習支援」が「p=0.0092」と有意で説明力のある変数であった。

⑤学校との情報交換

表1を見ると「総合満足度」に「子どもの満足している支援内容」の中で、「学校との情報交換」が影響していることが分かります。(※2)

また、「保護者支援で更に充実を求める項目に関して」では73.2%の保護者が「非常にそう思う」「どちらかというとそう思う」に回答をしていました。

このことから、保護者が学校と放課後等デイサービスが連携することを期待していることがわかります。

連携により学校の担任や子どもに関わる先生の情報、事業所の子どもに関わるスタッフの情報、家庭での生まれた時からの生育歴など、総合した支援を行うことで、よりその子どものニーズにあった支援が期待できるようになります。

学校からの依頼で保護者向けの講演を実施するヴィストのスタッフ

(※2)表1:「総合満足度」に「子どもの満足している支援内容」の中で、「学校との情報交換」が「p=0.0054」と有意で説明力のある変数であった

⑥保護者への情報提供及び保護者同士に交流の場の提供

「総合満足度」に「満足している保護者支援の内容」がどの程度影響を与えているかを分析したところ「事業所での様子を教えてもらえる」が最も影響していました。(※3)

表2 「総合満足度」に「満足している保護者支援の内容」がどの程度影響を与えているかを明らかにするため重回帰分析を実施した結果

また、「保護者支援で更に充実を求める項目に関して」において、「子育てに関して情報がもらえる」に72.1%の保護者が「非常にそう思う」「どちらかというとそう思う」に回答をしています。

放課後等デイサービスは、保護者とスタッフ、保護者同士の交流がしやすい環境です。「放課後等デイサービスの活動内容について把握されていますか」の質問の結果では、「よく把握している」「やや把握している」を合わせると97.7%になり、「活動内容の把握方法」を尋ねた質問では、「スタッフから聞く」90.9%であり、事業所のスタッフと保護者が子どもの来所の様子などを通じ、コミュニケーションの頻度が高い様子がうかがえます。

通常の学校では、定型発達の子どもとさまざまな特性をもった子どもが混在しているため、発達に特性をもっている子どもの保護者だけの情報交換の場を作るのは困難です。

一方で放課後等デイサービスは、保護者同士が、発達に特性のある子どもや障害のある子どもの保護者が共通の悩みを抱えていることが考えられます。また、小学生から高校生まで様々な年代に保護者、他校同士の保護者が在籍している可能性があり、先輩の保護者との情報交換、様々な学校情報の交換が行えます。

ヴィストカレッジでの保護者リラックス会(ドライフラワーガーランドづくり)の様子

放課後等デイサービスではそういった環境的なメリットを生かした、保護者支援がより一層求められています。

(※3)「総合満足度」に「満足している保護者支援の内容」がどの程度影響を与えているかを明らかにするため重回帰分析を実施した表2を見ると、「事業所での様子を教えてもらえる」が「p=0.002」と有意で説明力のある変数であったことがわかる。

「支援の質」とは「子どものアセスメント」から始まる

以前の記事でも述べたように、「支援の質」=「専門的職員の配置」と結論つけるのは早急すぎると考えます。

保護者や子どもの療育的ニーズは、子どもたちの年齢、精神年齢、学習スタイル、学校の環境、家庭環境、住んでいる地域における社会資源など、さまざまな要因によって変化することが考えられるため、専門的職員が必要なケースもあれば、他のアプローチからの介入が効果的であるケースも多分に考えられます。

最も必要なのは子どものアセスメントです。

対象になるお子さんをフォーマル/インフォーマルで多角度からアセスメントし、子ども一人ひとりにあった支援計画を策定すること。そして、支援を実施し結果の検証を行い、次に支援計画で改善をするといった、支援のPDCAが行われることで、保護者や子どもの本当の療育的ニーズを発見し、子どもの興味関心に応えながら楽しく実施される支援こそ、「質の高い支援」であると思います。


[引用元・参考文献]
倉澤茂樹・立山清美・丹葉寛之・中岡和代・大歳太郎(2020):不器用さを呈する学習障害児への作業療法士による学校コンサルテーション.作業療法、39巻第5号、605-615.

田村茉奈・柿沼智美・川淵竜也・小林潤一郎(2014):自閉症スペクトラム障害の学齢児の興味・関心を広げる機会-参加プログラムの選択と自己理解-.明治学院大学心理学部附属研究所年報、第7号、63-72.

執筆者:林原洋二郎
ヴィストカレッジ ディレクター。富山大学大学院人間発達科学部修了(教育士)、金沢大学子どもの心の発達研究センター研究員。富山福祉短期大学非常勤講師。物流企業の営業職、広域通信制高校センター長を経て現職。発達障害の就労支援と発達に特性を持つ子どもの療育(発達を促し、自立して生活できるように援助すること)に従事。『放課後等デイサービスにおけるプログラミングを利用した自己肯定感を育む支援』(日本教育工学会論文誌/2021)など多数執筆。

 

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