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児童発達支援・放課後等デイ


読みもの

8年間で5倍に。急増する放課後等デイサービスとその課題

解説 2022.05.10

ヴィストカレッジディレクターの林原です。

2021年に「通常学校(普通級、特別支援級)に在籍し、放課後等デイサービスを利用している保護者へのアンケート」を富山県内10事業所にご協力いただき実施いたしました。

そのアンケート結果を元に、「これからの放課後等デイサービスに求められること」を3回シリーズで解説したいと思います。

第1回:放課後等デイサービスの課題
第2回:アンケート結果の概要
第3回:これからの放課後等デイサービスに求められること

今回は、第1回の「放課後等デイサービスの課題」についてお話をさせていただきます。

放課後等デイサービスとは?

最初に、放課後等デイサービスとは何か?を確認いたします。

制度的位置付け

就学している障害児につき、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与すること。(児童福祉法第六条の二の二)

対象となる児童

「学校(幼稚園及び大学を除く。以下同じ。)に就学している障害児」が対象となります(参照:厚生労働省(2015)放課後等デイサービスガイドライン)。

放課後等デイサービスを利用するためには、市町村より発行される「通所受給者証」が必要になります。

市町村ごとに発行される条件は異なるようですが、多くは「療育手帳」「医師の意見書や診断書」が必要となることが多いです。(それ以外にも、市町村の判断によって利用可能な場合があります)

サービス内容

放課後等デイサービスガイドラインには下記の4つが明記されています。
①自立支援と日常生活の充実のための活動
②創作活動
③地域交流の機会の提供
④余暇の提供

放課後等デイサービスの事業所の増加と課題

2012年から2020年の8年間で、放課後等デイサービス事業所数は全国で約5倍に増加しています。(厚生労働省:令和2年版厚生労働白書)。

「令和2年版厚生労働白書」を参考にヴィストにて作成

私が在住する富山県では、132事業所(2022年2月現在)が運営されており、各事業所がそれぞれ特色ある支援を行っております。

しかし、放課後等デイサービスの事業所増加に伴い、「支援の質」が問題視されています。2021年2月1日の読売新聞の記事を見てみます。

障害を抱える子どもたちの居場所となっている放課後等デイサービス(放デイ)で、179事業所が不正請求で行政処分を受けていたことが、読売新聞の調査で明らかになった。子どもの福祉よりも営利を優先する事業者の存在が見え隠れする。
放デイの利用料は1人1回1万円前後。国などからの公費で9割以上が賄われるため、利用者の自己負担額は1000円程度で済む。10人が20日間通所すると、事業者は月200万円の収入を見込める計算だ。経費を差し引いても100万円前後の利益が出るといい、全国でフランチャイズ展開する事業者も少なくない。
放デイはスタート当初から、テレビを見せるだけの事業所があるなど、サービスの質に差があることが国会で問題視されていた。厚生労働省は2015年、放デイの基本姿勢を示すガイドラインを策定。17年に職員の半数以上を児童指導員や保育士にすることを義務付けたが、それでも不正請求が増える背景にはチェックの甘さがある。

(2021年2月1日 読売新聞)

放課後等デイサービスガイドラインでは、「現在の放課後等デイサービスの提供形態の多様性に鑑みれば、「放課後等デイサービスはこうあるべき」ということについて、特定の枠にはめるような形で具体性をもって示すことは技術的にも困難」としつつも「放課後等デイサービスを提供する事業所が、その支援の質の向上のために留意しなければならない基本的事項もまた共通するはずである」と支援の質に関して述べています。

また、2018年の放課後等デイサービスの報酬改訂では、作業療法士等の専門職員配置した際の加算要件の追加など、支援の質が担保できている事業所を報酬上評価する変更が行われています。

また、2021年10月には、『障害児通所支援のあり方に関する検討会報告書」では、「まだ、顕在化していない支援ニーズがある可能性」を指摘しています。(特に通常学校に在籍する発達障害のある児童生徒に関する調査では「学習面又は行動面で著しい困難を示す」子どもは小学校で7.7%)

厚生労働省「障害児通所支援のあり方に関する検討会報告書」を参照にヴィストにて加工

今後も放課後等デイサービス事業所の増加を示唆する一方で、「障害児通所支援が提供する発達支援の質をあげていくことが重要」と述べています。

また、同検討会では、放課後等デイサービスを2類型(「総合支援型」「特定プログラム特化型」)に分類する方向性を示し、支援内容に応じた支援の質の向上を事業所に求めていく模様です。

支援の質とは何を指すのか?

それでは「支援の質」とは何でしょうか?

作業療法士等の専門スタッフを配置しただけで「支援の質」が上がる、と考えるのは短絡的です。

子どもの療育的ニーズや保護者のニーズに答える支援をヴィストカレッジでは目指しています。

子どもや保護者のニーズに応える支援を行える事業所が、本当の意味で「支援の質の高い事業所」ではないかと考えます。

次回は、2021年に実施した「通常学校(普通級、特別支援級)に在籍し、放課後等デイサービスを利用している保護者へのアンケート」の結果の概要をご説明し、保護者のニーズに迫っていきたいと思います。

続き:保護者アンケート調査から見る、放課後等デイサービスを利用する理由と支援への満足度


[引用元・参考文献]

児童福祉法 第六条の二の二
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82060000&dataType=0&pageNo=1

厚生労働省(2015)「放課後等デイサービガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000082831.html

厚生労働省(2020)「令和2年版厚生労働白書」
https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/

厚生労働省(2021)「障害児通所支援のあり方に関する検討会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21746.html

読売新聞「【独自】「放課後デイ」不正請求、甘いチェック…TV見せるだけの事業所も」 (2021年2月1日)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210131-OYT1T50201/

執筆者:林原洋二郎
ヴィストカレッジ ディレクター。公認心理士。富山大学大学院人間発達科学部修了(教育士)、金沢大学子どもの心の発達研究センター研究員。富山福祉短期大学非常勤講師。物流企業の営業職、広域通信制高校センター長を経て現職。発達障害の就労支援と発達に特性を持つ子どもの療育(発達を促し、自立して生活できるように援助すること)に従事。『放課後等デイサービスにおけるプログラミングを利用した自己肯定感を育む支援』(日本教育工学会論文誌/2021)など多数執筆。

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