言葉が遅い?指示理解が苦手?など「発達障害かも?」と悩んでいる保護者の方へ。児童発達支援のサービスと利用方法
乳幼児検診で「言葉が遅れている」などの指摘があった、保育園・幼稚園などで「一人遊びが多い」「集団活動が苦手」などと保育士さんから相談された、日常の生活の中で周囲のお子さんと比べ「言ったことが伝わらない」、お家での「かんしゃくが多い」など、日常の家庭生活の中で「もしかすると、自分の子どもが発達障害かも?」と悩んでいる保護者の方からの相談が日々増加しております。
そして、相談に来られた保護者の多くの方がおっしゃるのが「どうしようか悩んでいるけど、どうしたらいいかわからない」ということです。
今回は、そういった悩んでいる保護者の方に「児童発達支援」のサービス内容と利用の仕方に関してご紹介したいと思います。

児童発達支援とは?
児童発達支援とは、2012年の児童福祉法の改正に伴い創出された福祉サービスで、対象は0歳から6歳の未就学児で、主に発達に課題を持つ子ども(発達障害や知的障害)に対して、専門的な支援を提供するサービスです。
この支援は、子どもの成長促進を促し、子どもが保育園や幼稚園、小学校等や地域社会で円滑に適応できるようになることを目的としています。
① どんなお子さんが通われている?
発達障害や、発達に遅れや特性のあるお子さん、知的障害のお子さんが療育を受けることを目的に通われています。一人ひとり発達の特性は違います。
児童発達支援は「個別支援計画」という、一人ひとりの支援目標や支援内容を保護者と一緒に決めた計画をもとに療育が行われる「オーダーメイド支援」が大きなポイントです。
※療育とは・・・専門的な支援や教育を通じて、その子どもの発達を促すプログラム等
「早期療育」の必要性はここ数年で強く叫ばれています。それは、「発達障害」というラベリングする目的ではなく、早いうちから、その子どもにあった学び方を知ること。その子どもが「どこが得意でどこが苦手か」を早いうちから知ることで、得意なところはどんどん伸ばし、褒めることで、未就学児に獲得が必要な「自己肯定感」を育て、自ら学びたい気持ちを伸ばし、さまざまな可能性を見つけること。苦手なことに関しては、ゆっくりでも子どもの発達を信じて、無理させることなく発達の促し方を見つけること。こうした療育は早ければ早いほど効果が現れるといわれているからです。
数年前までは、保育園や幼稚園に通ってから療育も開始される方が多かったですが、今では1歳半検診後、入園前に「プレ保育」として利用される方も増えています。
② どのくらいのお子さんが利用されている?
全国の事業所数は、2012年の制度ができてから2020年までに、おおよそ8倍になっています。法律改正前には「身体・知的障害のある子ども」が支援の対象でしたが、法律改正後は発達障害のお子さんが支援と対象に入りました。

特にここ数年は、メディアの啓蒙活動や法的な整備もあり、いわゆる「発達障害ブーム」が、事業所と利用者の増加につながっていると思われます。
また、国としては「潜在化してきた支援ニーズについて、既に相当程度顕在化したと考えるよりは、まだ顕在化していない支援ニーズがあり、障害児通所支援の利用者数は、今後も増加する可能性がある」(厚生労働省 令和3年 障害児通所支援のあり方に関する検討会)としており、ニーズはまだまだ増えていくと予測しています。
③ 療育の内容は?
ヴィストでは、「集団療育」と「個別療育」の2種類を行っています。
集団療育では、「5人〜8人程度の小集団」で、保育園、幼稚園や、将来、小学校に上がった際に必要となる「先生の話を聞いて行動する」「周囲のお友達と活動をする」「必要な援助要請や行動終了の報告」などを、子どもたちが楽める活動の中で、子ども達の成長に合わせて実施します。
個別療育では、基本的にはスタッフと子どもが1対1で、その子どもの目標に合わせた支援を行い、必ず「成功体験」をお子さんが持ち帰ってもらえることを目標に行っています。
信州大学の本田秀夫先生は、さまざまな著書の中で「思春期までは守られた環境で、思春期以降は支援つきの試行錯誤」とお話しされています。思春期前の未就学児には、本人の特性に合わせた成功体験をどのように積んでもらうか、それを通して苦手なことにもチャレンジしていく気持ちを促進することが大切です。
4月生まれのお子さんと3月生まれのお子さんでは、同じ学年でも1年の違いがあり、成長の差も大きくなります。また、本人の特性や環境への適応の違いによっても、支援の内容やアプローチも異なってきます。
具体的な内容に関しては、粗大運動や体幹に課題がある子どもは、鬼ごっこやサーキットトレーニング、微細運動に課題がある子どもには、アイロンビーズやプットイン活動などを行います。また言語に課題があるお子さんは、脳の認知機能の遅れに課題があるケースが多く、「言葉」のみに注目するのではなく、「本人が言葉を出したい環境作り」が重要です。遊びを通して、本人が伝えたいことをスモールステップ(例えば“もう一回”をターゲット言語にするなど)で行われます。
児童発達支援を利用するには?
児童発達支援を利用するには「サービス等受給者証」を自治体より入手をする必要があります。流れは下記になります。
詳細は、「児童発達支援事業所」か「各市町村」にお問い合わせください。
①市町村に「児童発達支援」を利用したいことを相談し、申請書を記入する
お子さん同席が必要な場合が多いですので、事前にご確認ください。
②市町村が指定する書類を提出する
多くの市町村では、医師の診断書や意見書、保健師の意見書を求められるケースが多いです。
③ 障害児支援利用計画案を「相談支援事業所」に作ってもらい、提出してもらう
セルフプランが認められている市町村では、保護者が作成することも可能です。
④ 通いたい児童発達支援を探し、見学・面談
市町村の申請前でも、見学体験は可能な事業所が多いです。
⑤ 書類を提出し受給者証の申請を行う
⑥ 受給者証交付
⑦ 児童発達支援事業所と契約する
⑧ 個別支援計画の確認
⑨ 利用開始
お子さんの様子が気になったら相談してみよう
ヴィストでは、児童発達支援のみ行っている「ヴィストカレッジ富山環水公園前」、児童発達支援と放課後等デイサービスを行っている「こぱんはうすさくらヴィスト富山二口教室」「ヴィストカレッジ西金沢駅前」と3事業所で児童発達支援を行っています。
未就学の間に、発達に気になることがありましたら、お近くの事業所にお気軽にご相談ください。サービス受給者証を入手前でも、それぞれの教室には「専門家」を配置していますので、事業所の利用の有無に関わらずご相談ください。


執筆者:林原洋二郎
ヴィストカレッジ ディレクター。公認心理士。富山大学大学院人間発達科学部修了(教育士)、金沢大学子どもの心の発達研究センター研究員。富山福祉短期大学非常勤講師。物流企業の営業職、広域通信制高校センター長を経て現職。発達障害の就労支援と発達に特性を持つ子どもの療育(発達を促し、自立して生活できるように援助すること)に従事。『放課後等デイサービスにおけるプログラミングを利用した自己肯定感を育む支援』(日本教育工学会論文誌/2021)など多数執筆。