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児童発達支援・放課後等デイ


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就労アセスメントツール「BWAP2」を解説!

解説 2022.08.07

ヴィストカレッジディレクターの林原です。

ヴィストカレッジ富山・石川エリア合わせて、毎年30名近い高校3年生が卒業します。高校卒業後の進路に関しては、進学が最も多く、一般就職、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所とさまざまな進路を選ばれています。

ヴィストでは、障害のある児童生徒(6歳〜18歳)が小学校〜高校の学校在学中に利用できる「放課後等デイサービス(ヴィストカレッジ)」から、障害のある18歳以上の方が一般就労を目指すために2年間を上限とした訓練を受けることのできる「就労移行支援(ヴィストキャリア)」、障害のある18歳以上の方が支援を受けながら就労の継続を行うことを目指す「就労継続支援(ヴィストジョブズ)」と、子どもから大人まで一貫した支援体制を整えております(※)。

(※ヴィストカレッジでは未就学児が利用できる児童発達支援も提供していますが、今回は割愛いたします)

高校卒業とともにヴィストカレッジを卒業し、ヴィストキャリアやヴィストジョブズへの進路を選ばれる方も少なくありません。

その際に課題になるのは事業所間での「アセスメント情報の引き継ぎ」です。

卒業生を送り出す側の、ヴィストカレッジ(放課後等デイサービス)が、対象者の「何が得意?」「何がやりたい?」「何が苦手?」「何を頑張りたい?」などの情報を引き継ぎ先のヴィストキャリア・ジョブズに正確に伝えることによって、ヴィストキャリア・ジョブズで最初にアセスメントする情報が少なくてすみます。すると、より次のステージで対象者を深くアセスメントすることができ、本人が希望する社会生活に近づけることができると思います。

ヴィストでは、就労アセスメントツールとしてBWAP2を開始しました。

特に発達障害や知的障害の方にはとても有効なアセスメントツールです。

今回は、実施例を挙げながら、BWAP2に関して解説していきたいと思います。

BWAP2とは?

BWAP2とは、「Backer Work Adjustment Profile」の頭文字を取ったもので、ラルフ・L・ベッカー博士(Ralph L. Becker,Ph.D. オハイヨ州コロンバス州立大学教授)により開発されました。

日本では、早稲田大学の梅永雄二教授が翻訳し、2021年1月に「発達障害の人の就労アセスメントツールーBWAP2<日本語版マニュアル&質問用紙>」を出版されました。

BWAP2は、元々は知的障害者が就労する上でどのようなことが課題となっているかを評価するものでした。

その後改定され、知的障害者の他に、学習障害者、身体障害者、情緒障害者の4つに分類され、従来の就労アセスメントでは特性把握が難しかった「知的障害のない自閉症スペクトラム症」の人たちの就労上の課題を見出すことができるようになりました

BWAP2の主な対象者は、高校生・大学生〜成人、実施時間は15分程度を想定されております。

従来の職業適性検査、職業興味検査などと異なり、日頃の本人の様子や、仕事(実習を含む)をしている様子を見て評価していきます。比較的短時間で相対的に評価できるのが強みです。

BWAP2で評価する4項目

① 仕事の習慣/態度(HA:Work Habits/Attitude)

「勤怠状況」「時間厳守」「衛生管理」「意欲」及び「仕事中の姿勢」を評価する10項目が設定されています。

このスキルは、仕事をする上で必要な行動や態度を表す内的な特性を評価するもので、遅刻や欠席が多いか?身なりが行き届いているか?忍耐力はどうか?などを観察し評価します。

② 対人関係(IR/Interpersonal Relations)

「社会的関わり」「情緒の安定」「協調性」などの分野を12項目より評価します。

この項目では対象者がさまざまな職場の状況の中で同僚や上司との社会的な関わり方(職場で変化があった時や落ち込んだ時、ストレスが生じた時の情緒の安定、同僚や上司との協力体制など)を評価します。

③ 認知能力(CO:Cognitive Skills)

「推論」「判断」「知覚」「思考」「認識」といった主に知的なスキルを評価する19項目が設定、具体的には、日常生活における時間概念、仕事に関する知識、実務管理の能力などです。

④ 仕事の遂行能力(WP:Work Performance Skills)

「粗大及び微細運動」「コミュニケーション」「仕事の責任」「作業効率」の4つの分野を評価するための22項目が設定され、具体的は、手の動きなどの運動能力、サイン言語や言葉を使って基本的な要求を伝える能力、仕事の質や量など、広範囲にわたって対象者の内的特性を評価します。

BWAP2の評価事例

放課後等デイサービスに通所する方の評価事例を紹介いたします。

Aさんの評価シート

Aさんは高校3年生で、自閉症スペクトラム障害を持つ、定時制高校に通学する男子です。

Aさんの強みは「認知能力(CO)」です。

評価の詳細を見ていくと「数の概念」「コミュニケーション能力」「記憶力」「書字能力」「時計・電話など道具の利用」に関しては問題がありません。
一方で、「仕事の習慣/態度(HA)」と「仕事の遂行能力(WP)」に課題があります。

「仕事の習慣/態度(HA)」の詳細を見ていくと、「衛生面」「適切な服装」に特に課題が見られました。実際の様子をスタッフから聞いてみると、衛生面では頭髪のフケや体臭が気になる、「適切な服装」では、仕事体験や面接練習の際にキャラクターのTシャツでやってくる等の事実が見られるそうです。

「仕事の遂行能力(WP)」の詳細を見ていくと、「必要な援助要求」と「問題の報告」に特に課題が見られました。「必要な援助要求」では、疲労度を自分で把握することが苦手なため、気がついた時にはちょっとしたパニック状態になっていることがあるとのこと、「問題の報告」ではトラブルが起こった時に対応することが苦手で溜め込みやすい面があるとのことでした。

BWAP2の評価を通じた支援例

Aさんの場合は、「仕事の習慣/態度(HA)」、「仕事の遂行能力(WP)」を集中的に改善するための支援計画を立てることになりました。

仕事の習慣/態度(HA)

・「衛生面」
頭髪のフケに関しては、洗髪自体は毎日行えているそうなので、洗髪のやり方(頭皮まで指を入れて洗髪しているか?)を確認、体臭に関しては、お風呂かシャワーは毎日行えているそうなので、服の交換状況・洗濯状況(生乾きになっていないか?)などを確認しています。

・「適切な服装」
TPOに合わせ正装の必要な場面、私服で構わない場面(カジュアル)、くだけた服装(キャラクターTシャツを着ても構わない場面)など、場面設定を具体的に指導しました。

仕事の遂行能力(WP)

・「必要な援助要求」
本人の疲労度を自分で把握するため、生活リズム表に疲労度の点数をつけてもらいました。学校で午後に入ると疲労度が高くなることがわかったため、お昼ご飯を食べた後、昼寝をする時間を提案しました。

・「問題の報告」
自分が「トラブル」と感じなくてもストレスを感じていることがあるとのことでしたので、ストレスを感じている可能性がある際は、スタッフに声をかけてもらうように設定し、スタッフ全体でそれを共有しました。

BWAP2は簡易で誰でもできる就労上の包括的なアセスメントツール

ヴィストカレッジ(放課後等デイサービス)、ヴィストキャリア(就労移行支援)では、就労上で得意になるところ、課題となるところを把握するためにBWAP2の使用を開始しました。

対象者のステージが変わる時(進学、就職など)において、支援者が共通の指標で支援をつなぎ、次のステージの支援者が対象者をよりよく知り次の支援に生かしていくことこそ、私たち放課後等デイサービスの支援者の役割であると考えます。

ヴィストカレッジでは、「支援をつなぐ」ためのツールを独自で開発や、他の標準化されたアセスメントツールを使用するなど、試行錯誤してきました。

BWAP2のように、職業スキルから認知スキル、対人スキルなど、包括的にアセスメントできるツールは数多くはありません。また、BWAP2の最大の特徴は簡易であること、対象者を理解している人であれば誰でも実施できるところです。

発達障害や知的障害の就労に向けた支援携わる方にとって、BWAP2は有効なアセスメントツールであると考えています。

[引用元・参考文献]
梅永雄二(2021)「発達障害の人の就労アセスメントツールーBWAP2<日本語版マニュアル&質問用紙>

執筆者:林原洋二郎
ヴィストカレッジ ディレクター。富山大学大学院人間発達科学部修了(教育士)、金沢大学子どもの心の発達研究センター研究員。富山福祉短期大学非常勤講師。物流企業の営業職、広域通信制高校センター長を経て現職。発達障害の就労支援と発達に特性を持つ子どもの療育(発達を促し、自立して生活できるように援助すること)に従事。『放課後等デイサービスにおけるプログラミングを利用した自己肯定感を育む支援』(日本教育工学会論文誌/2021)など多数執筆。

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