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攻撃的な反応をする子どもへの対応のコツ 「ストラテジーシート」を用いた支援方法を解説します

解説 2022.06.06

ヴィストカレッジディレクターの林原です。

私は「富山福祉短期大学」で非常勤講師として「特別な支援が必要な子どもへの支援」の授業を受け持ち、保育士の育成を行っております。また、障害福祉事業のコンサルティングで支援員の支援力向上を目的に講義を行なっております。

先日、その2つの講義の中で同じ質問がありました。

それは「攻撃的な子どもへの対応方法を教えて欲しい」というものです。

短大の学生にその理由を聞くと、「保育実習に行った際に、提示した遊びの全てに拒否を示し、再度提示すると暴言を吐いたり、引っ掻いたりして困りました」ということでした。また、コンサルティングを担当している事業所のスタッフに話を聞くと「特定の課題(その子どもはプリント課題)で、間違った問題に修正を求めると、プリントを破く、暴言を吐くなどの行為がある」ということでした。

今日は特に後者の事例を通して、「攻撃的な反応をする子ども」への対応を解説いたします。

「ストラテジーシート」を活用してみよう

問題行動を検討する際には「氷山モデル」で行動の背景にあるものを多角的に見立て、支援方法を検討する必要があります。

氷山モデル

問題行動の背景を見立て、支援方法を検討するには「ストラテジーシート」の活用が有効です。

ストラテジーシートの見本


実際のシーンに沿って活用方法を説明していきます。

ストラテジーシートの活用方法①「行動を分解する」

まず、事例の行動を分解します。

事例:「特定の課題(その子どもはプリント課題)で、間違った問題に修正を求めると、プリントを破く、暴言を吐くなどの行為がある」

A:事前 特定の課題(その子どもはプリント課題)を実施
B:行動 間違った問題に修正を求める
C:事後 プリントを破く、暴言を吐くなどの行為がある

となります。

行動を分解した際の記入例

ここで注意したいポイントが2つあります。

1つ目は問題行動に注目しすぎないことです。

問題行動はあくまで「結果」であり、行動には必ず背景があります。その背景を理解し、支援することで行動は結果として望ましいものに変わってきます。問題行動は、子どもが「苦しんでいる心の声」と思ってください。

2つ目は支援する際に「どの背景にアプローチした支援」であるかを明確に支援者間で共有することです。

支援に正解はありません。TRY AND ERRORの繰り返しです。もし、失敗した際には「この背景にアプローチしてもうまくいかなかった。次は違う背景にアプローチしてみよう」と建設的な支援が組み立てられます。逆にうまくいった際は、「この背景にアプローチしたらうまくいった。他の子どもの支援にも取り入れよう」と、事業所全体の支援する力が上がっていきます。

ストラテジーシートの活用方法②「背景を見立てる」

今回の事例では、問題行動が起こる背景としてどのようなことが考えられるでしょうか?

そのお子さんの様子を拝見し、養育歴や心理検査等から以下のことが考えられました。

  • ⑴ プリントのレベル設定が本人にあっていない。(難しすぎる)
  • ⑵ 書字の問題(書くことが苦手。疲労で本人のストレスレベルが高くなる可能性がある)
  • ⑶ スタッフとの相性(担当は女性スタッフ。男性スタッフの時はうまくいくことも多い様子)
  • ⑷ 教室の環境の課題(教室が狭く、視覚的、聴覚的な刺激にストレスを感じている可能性がある)
  • ⑸ 修正を求められることへの抵抗(本人としてはとても頑張ったのに、否定が続けられ自己肯定感が下がっている)→先生と本人の達成度のギャップ
  • ⑹ その日の本人の体調(服薬、睡眠時間、家庭での保護者との関わり合いなど)
  • ⑺ 周りの友達との関わり合い(特定の子どもに強度の反応を示す)
  • ⑻ 衝動性が強いため、近くの物を投げたい衝動が勝ってしまう。

実際に本人と関わっていく中で、どんどんその背景となる可能性は拾えていくと思います。それを積み重ねていきます。

ストラテジーシートの活用方法③「どの背景に対して工夫するか、どんな工夫をするかを検討する」

ストラテジーシートの中の「事前の対応の工夫」にあたる部分です。それぞれの背景から支援の工夫を考えます。

例えば、『⑴プリントのレベル設定が本人に合っていない』にアプローチした時の工夫として、「本人ができていることに着目しプリントを作成する」「プリントを何種類か準備し、本人に選んでもらう」「なぞりや見本を見て書く、など失敗の少ないプリントを準備する」などが検討できます。

『⑴プリントのレベル設定が本人に合っていない』にアプローチした場合の事前の工夫


『⑵書字の問題』にアプローチした時は、「書く文字の量を減らす→◯×や選択式を多くする」「パソコン学習を中心にする(当該児はパソコンが得意)」などの工夫が検討できます。

『⑵書字の問題』にアプローチした場合の事前の工夫

できれば、どの背景に対しての工夫なのかを明確に把握するために、スモールステップで少しずつ試しながら、それぞれの工夫の効果検証を行なっていくことをお勧めします。どの工夫がこの子どもには合って、どの工夫が合わないかを明らかにするためです。

ストラテジーシートの活用方法④「望ましい行動をイメージし、スタッフ間で共有する」

支援の工夫を考えたのちに、ストラテジーシートの「望ましい行動」をスタッフ間で言語化し、共有します。

例えば、⑴の背景に着目した工夫は、「攻撃的な行動なくプリント課題をやり遂げる」ということになるかもしれませんし、⑵の背景に着目し「パソコンを使用する」という工夫であった場合は、「攻撃的な行動なくパソコン上で課題を終える」という行動になり、望ましい行動が全く違うものになります。

どの背景に着目するかで工夫する内容も望ましい行動も全く違うものになる

また、行動として測れないないものは、「望ましい行動」の欄には入れない方がいいと思います。

例えば、「嬉しそうにパソコン課題に取り組める」は、「嬉しそうに」はスタッフが見た主観ですので、他のスタッフが見たらそうではないかもしれません。支援の工夫によって成果が出ているかどうかは「行動」で見ることをお勧めします。

ストラテジーシートの活用方法⑤「起こってしまった時の対応も検討する」

今ほど述べてきたように「TRY AND ERROR」を繰り返し、適切な支援を探ります。

なので、問題行動が起こることは想定しておく必要があります。その際のキーワードは「チームワーク」です

例えば、今回の事例でいうと、「男性スタッフには攻撃的になりにくい」というアセスメントの結果がありましたので、何か起こった時に男性スタッフが出動できる人員配置、連絡系統の確保は大切です。

また、事例では「投げる」という問題行動があるため、投げて重大な事故が起こるもの(カッター、ハサミ、パソコンなど)は教室から撤去するか、仕切りなどを設けて見えなくするのが良いでしょう。

「子どもは必ず成長する」ことを信じてTRY AND ERRORを続けることが重要

「攻撃的な行動をする」問題行動の背景には、本人自身に発達の特性がある可能性も高いです。

特にADHD(注意欠如多動性障害)で衝動性のあるお子さんは、実行機能が未熟であることが科学的に証明されています。そのため、目標行動を達成するプロセスに問題が発生すると、対処できずパニックを起こしてしまうことが予測されます

また、ASD(自閉症スペクトラム障害)でこだわりが強いお子さんは、自分一人でやり遂げることにこだわりを持つ場合、「修正される」事象自体がパニックの対象になるかもしれません。

しかし、子どもの脳は必ず成長します

ヴィストカレッジで支援をしている子どもたちで、小学校1年生の時は衝動的でスタッフの指示が入りにくかったお子さんが、小学生高学年・中学生になり落ち着いて行動ができるようになる子は珍しくありません(別な課題は出てきますが)。

子どもは必ず成長します。

保護者を含めた支援者は、問題行動そのものに囚われすぎず、その子に起こっている事象が、成長に大切な課題になっていることを信じ、「TRY AND ERROR」を繰り返すこと、もし自分たちの事業所のみで対応が限界である時は、必要に応じて他機関と連携を模索していくこと、継続的な支援が重要だと考えます。


執筆者:林原洋二郎
ヴィストカレッジ ディレクター。富山大学大学院人間発達科学部修了(教育士)、金沢大学子どもの心の発達研究センター研究員。富山福祉短期大学非常勤講師。物流企業の営業職、広域通信制高校センター長を経て現職。発達障害の就労支援と発達に特性を持つ子どもの療育(発達を促し、自立して生活できるように援助すること)に従事。『放課後等デイサービスにおけるプログラミングを利用した自己肯定感を育む支援』(日本教育工学会論文誌/2021)など多数執筆。

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