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自閉症スペクトラム障害(ASD)のお子さんの「感覚過敏」に配慮した教室運営とは?学校での集団活動が苦手な子どもと楽しく活動を行うコツ③

障害理解 2022.04.27

ヴィストカレッジディレクターの林原です。
前回は「構造化」の観点から自閉症スペクトラム障害(ASD)のお子さんが集団で楽しく活動するコツをお伝えしました。

復習しましょう。3つの「構造化」の観点をお伝えさせていただきました。

① 活動の構造化
② 物理的構造化
③ 時間の構造化

どれも、基本的な考え方としては「子どもが活動を楽しく、全力で行えるため、わかりやすく伝わる」ための配慮です。

特に、自閉症スペクトラム障害(ASD)の傾向を持つお子さんたちは、いわゆる「定型発達」が多数派を占めるお子さんたちとは学習スタイルが違うので配慮が必要です。

しかし、その配慮は自閉症スペクトラム障害(ASD)の傾向を持つお子さんのみに限定することではありません。自閉症スペクトラム障害(ASD)の傾向を持つお子さんが活動しやすくなるということは、他のお子さんたちが活動しやすくなることにもつながります。

今日は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性を持つお子さんの中で、特に「感覚過敏」への配慮のコツに関してお伝えいたします。

※画像はイメージです

感覚過敏等とは?

DSM-5(アメリカ精神医学会による診断基準)では、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断基準は下記のように定義されています。

以下のA,B,C,Dを満たしていること。

A.社会的コミュニケーション及び相互関係における持続的障害
 (以下の3点で示される)

1.社会的・情緒的な相互関係の障害
2.他社との交流に用いられる非言語的コミュニケーションの障害
3.年代相応の対人関係性の発達や維持の障害

B.限定された反復する様式の行動、興味、活動

1.情動的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方
2.同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の
 儀式的な行動パターン
3.集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある。
4.感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に
 対する普通以上の関心

C.症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある

D.症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている

感覚過敏等は上記のうち「感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心」という項目が対象となります。

「非定型的な感覚の特徴の問題がASD において認められる頻度は、調査の対象の年齢や診断などによっても異なるが、標準化された感覚の特徴に関する尺度を用いて評価された場合、69~95%と推定される」(高橋・神尾、2018)とあるように、自閉症スペクトラム障害(ASD)と感覚過敏等に関しては密接に関係があることがわかります。

ヴィストカレッジでは、感覚に偏りが見受けられ、学校生活などで困難さを感じているお子さんに「SP感覚プロファイル(Pearson社)」の検査を実施する時があります。

SP感覚プロファイル(Pearson社)の検査

この検査は、作業療法士等の専門職員が保護者へヒアリングをするかたちで実施され、感覚の問題を4つの領域に分類して整理します。

・低登録:強い刺激に対する反応が低いことです。ここが低いと感覚が鈍い傾向(感覚鈍麻)があるとされています。

・感覚探求: 強い刺激に対して反応が低いことで、刺激を求めたり、強い刺激が好きだったりします。

・感覚過敏:弱い刺激に対して反応が高く、環境や刺激の変化に敏感でちょっとしたことでもすごく気になります。

・感覚回避:弱い刺激(音や光)でも過敏に反応し、逃げてしまう傾向のことです。

また、検査対象となる感覚に関しては、「聴覚、視覚、触覚、口腔感覚など幅広い感覚に関する125項目で構成」されています。

集団活動での支援では、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性を持つお子さんが、どの刺激にどの位反応しているか(または反応しないか)、どういった行動をとるかをアセスメントすることから始まります。

学校連携を行なっている中で、「感覚の問題」と見られた事例と、学校に対処をお願いした事例をご紹介いたします。

「感覚過敏」に配慮した教室運営の事例と対処法

①授業中に教室の外に飛び出してしまうAくん

事例

Aくんは特別支援級在籍の視覚的な過敏性を持つお子さんでした。

授業中に衝動的に教室から出て行ってしまい、他の教室に出入りし他児とトラブルを起こしてしまうことが問題となっていました。

Aくんの様子を観察していると、気になるお子さんが教室の扉の向こうを通る姿が見えると、教室を飛び出すことが多いように見えました

教室内の環境をアセスメントし、課題点として2つをあげました。

⑴ 教室の扉が2つあり開けっ放しになっていた
⑵ 他の教室はドアを撤去していた

この2つが課題の一要因になっていると考えられました。
(先生に確認したところいずれも「新型コロナウイルス感染症予防の一環」とのことでした。)

視覚的に過敏のあるお子さんが、授業中に他の子どもたちや先生が動く様子が目に入り、そちらに興味を奪われ、衝動的に行動してしまうケースです。

対処法

先生には下記のような工夫をお願いしました。

⑴ 子どもたちが行き来できる扉を一つにする(扉一つを封鎖する)
⑵ 扉のガラスに目張りをする(外の様子を見えなくする)
⑶ 他のクラスに扉をつけてもらう(こちらは学校側も考えていた)

⑴ 〜⑶の工夫を行ったところ、Aくんは教室から衝動的に外に飛び出していくことが少なくなり、他児とのトラブルが減りました。

担任の先生も、教室内での教育活動に集中することができるようになったとお話しいただいています。

② 先生の指導に対し、パニックを起こしてしまうBくん

事例

Bくんは特別支援級在籍の聴覚的な感覚過敏、感覚回避を持つお子さんです。

教室の環境をアセスメントしていったところ、クラスメイトに多弁なお子さんがおり、そのお子さんの発言でBくんがイライラしている様子が伺えました。

聴覚的に過敏なBくんはクラスメイトの発言が気になり、教室から抜け出したいのに、真面目に取り組もうと我慢していました。その結果として、先生の指導がトリガーとなりパニックを起こしてしまうといった状況になっていました。

パニックを起こすのは、あくまで「氷山の一角」であり、根本的な困難になっている背景を解決する必要があります。

対処法

対応の方法として、下記のようなことを提案しています。

⑴ 席順を変更する(Bくんに過ごしやすいと感じる席を選んでもらう)
⑵ 「パニックになる前に、辛くなったら外に行ってもいい」と先生から伝えてもらうことで、Bくんが安心感を得られるようにする
⑶ パーテーション等で多弁なお子さんが落ち着くようなアプローチを行う

「Bくんは聴覚に感覚過敏がある」ことへの先生の理解と、クラスメイトも環境の一部であり、環境調整が大切と感じさせられた、Bくんの支援でした。

感覚の過敏や鈍麻がどこにあるかを知ることは、問題行動の背景を知るためにも重要

私が自閉症スペクトラム障害(ASD)の傾向を持つお子さんの支援をしていて、「本人の努力不足」や「本人の怠け」で問題が起こっているケースはほとんどありません。

逆に、本人が頑張りたいのに、「感覚過敏等」などの本人の特性的な理由で実行することが難しく「過剰適応」の結果として問題行動に至るケースがほとんどです。

※画像はイメージです

自閉症スペクトラム障害(ASD)の背景に「感覚過敏等」の問題がある、ということを把握すること、子どもが楽しく活動を行えるよう、先生が「TRY & error」を繰り返すこと、また、学校で先生が「TRY & error」を気軽に行える環境が必要だと考えます。

次回は、「これからの放課後等デイサービスに求められること(保護者アンケート調査の結果より見えるもの)」に関してお話をさせていただきます。


※参考文献
高橋・神尾(2018). 自閉スペクトラム症の感覚の特徴, 精神神経学雑誌, 120(5), 369-383.

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