場面緘黙症の就職活動ってどう進めるの?Aさんの実例をもとにご紹介します
こんにちは。ヴィストキャリア武蔵ヶ辻です!
ヴィストキャリアでは、場面緘黙症がある方からのお問い合わせを定期的にいただきます。
障害の特性上、“話せない”ことで、就職活動を悩まれる方も多いかと思います。
実際、最初に見学に来られた際に「どうやって就職活動をしていったら良いかわからなくてヴィストに来ました」という声も多くいただきます。
そんな中、ヴィストキャリア武蔵ヶ辻では10月に、場面緘黙症の利用者Aさんがご就職されました!
今回はAさんの実例を基に、“場面緘黙症の方の就職活動”の一例をご紹介します!
場面緘黙症とは?
場面緘黙とは、話す能力があるにもかかわらず、学校や職場等の特定の社会的状況では声を出して話すことが出来ない状態で、社交不安症 (social anxiety disorder) の一つとして考えられる症状であるといわれています。
米国精神医学会 (APA) が定めた「精神障害の診断と統計の手引き (DSM-5)」の診断基準では、
・学業上や職業上の成績、対人的コミュニケーションを妨げている
・少なくとも1ヶ月以上は持続している
等があります。
従来は小児期や青年期に多く発症すると言われていましたが、近年では成人期でも症状がみられることがあるといわれているものになります。
参考文献:日本場面緘黙研究会HP( https://mutism.jp/about-sm/ )、飯田 大輔,岡田 摩理(2024).成人の場面緘黙当事者がポジティブな効果を感じた体験と望んでいる支援.日本赤十字豊田大学紀要19巻1号,pp33-49.
Aさんにインタビュー
はじめに、Aさんにインタビューです!よろしくお願いします!
Aさんプロフィール
Aさんは、20代の女性で、場面緘黙症・発達障害があり、ヴィスト通所期間は約1年半です。
場面緘黙はいつ頃からあったか教えていただけますか?
Aさん『小学2年生の頃からです』
ヴィストへ通う前の学生生活において、場面緘黙で困った経験があれば教えてください
Aさん『小学生の頃は同級生に「どうして喋らないのか」とよくきかれました。他には精神科以外の医療機関を受診した時にも、うまく伝えられずに困りました』
そうでしたか。ヴィストに来られてからは、事務職希望とのことで、パソコンの練習をしたり、ワークに参加しスマホで自分の意見を発信したり、報告カードを作成し報告時に活用していましたね!
ヴィストでの活動や就職活動をする中で、ご自身なりに心がけていたことがあれば教えてください
Aさん『安定して通うために生活リズムを整えることと、作業の報告をすることを心がけていました』
ヴィストへは毎日休まずに通い、報連相の練習も意識しながら取り組まれていましたよね!そして現在は希望だった事務職に就職されました。おめでとうございます!
現在のお仕事内容と、周囲の方とどのようにコミュニケーションをとっているかを教えてください
Aさん『作業内容はデータ入力と書類のスキャンをしています。コミュニケーションはうなずきと筆談、そしてヴィストで作成した報告カードを活用しています』
いろいろな方法で工夫しながらコミュニケーションをとっていらっしゃるんですね。
Aさん、ご回答ありがとうございました!
では続いて、担当支援員にもインタビューしてみたいと思います!
支援員にインタビュー
Aさんと関わっていく中で、コミュニケーション(意思疎通)で心がけていたことはありますか?
支援員『面談等でお話しするときは表情を見るようにしていました。特に、目元を見ながら「話しづらくないか」「何か伝えたいことはないか」を意識して感じ取るようにしていました。また、返答を急かすのではなく、本人が意見を発信しやすいように本人のペースに合わせながらコミュニケーションをとっていました』
どのような支援やプログラムを提供されましたか?心がけていたこともあれば教えてください。
支援員『発信の練習、希望職種である事務職就職に向けてコミュニケーション系のワーク(朝活カフェ、KIMAMAトーク)やパソコンのワーク、オフィストレーニングを提供していました。心がけていた点として、まずは本人の体力に合わせてシフト少しずつ伸ばしていきました。就労経験の無い方でしたので働くための体力をつけるためにも、まずは半日の活動から本人の体力に応じて少しずつ働くために必要な活動日数・活動時間になるよう本人と相談しながら調整していきました。
また、自己発信できるようコミュニケーションをとりやすい方法についても様々な方法を試しました。元々自分の意見を伝える時は、スマートフォンに入力して発信する方法をAさんはとっていらっしゃったのですが、職場によってはスマートフォンの使用が難しい場合もあるため「報告カード」を一緒に作成したり、メモ帳に報告でよく使う文言をあらかじめ記載しておき、それを首から下げることですぐに自己発信できるようにする方法を一緒に考えました』
本人の強みをどのように見つけていきましたか?
支援員『ヴィスト内での様々な活動を通して、本人の強みを一緒に見つけていきました。例えば、個別準備やオフィストレーニングでパソコンの練習をしている際に、姿勢を崩さず黙々と取り組んでいる様子があり、集中力の高さを感じました。また、ヴィストで活動していく中で作業終了時や休憩時の報告も漏れなくできるようになっていき、報連相が身についたところも本人の強みだなと思いました。まだまだ本人の強みは沢山ありますが、本人の強みだなと思った点については面談や日々の振り返りの中で本人へ適宜フィードバックし、一緒に整理をしていました』
そのような関わりがあったのですね。Aさんはその後、ご本人の希望でもあった事務職の求人があり、応募の結果、石川県障害者実習制度を利用して晴れて就職となりました!
職場環境や合理的配慮について、どのように企業側とすり合わせましたか?
支援員『今回は企業側が初めての障害者雇用とのことで、現場の方が不安にならないよう面接を通過し実習が決まった段階で、指示の出し方やコミュニケーションの取り方等の配慮事項を現場の方に事前に伝える説明会を設けさせていただきました。企業側も本人が報告や質問をしやすいようにシートを作成されていましたので確認させていただき、本人も企業さんもお互いが安心して働けることを心がけて調整をしていきました』
最後にご本人へひとことお願いします!
支援員『初めての就職でいろんなことが初めてだとは思いますが、今後もスキルアップ目指して頑張っていってください!応援しています!』
現在Aさんは職場からの評価も非常に高く、戦力として活躍されているとのことで、これからもご本人らしく長く働いていけることをスタッフ一同願っております!
お忙しいところご協力いただいたAさんありがとうございました!
ヴィストキャリア武蔵ヶ辻では利用者さんひとりひとりに応じた個別伴走型支援を行い、“その人らしく働ける”をモットーに取り組んでいます。
「就職活動をどうやったらいいかわからない」「働きたいが何をしたらいいかわからない」などがあればぜひお気軽にお問い合わせください♪