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「場面に応じた行動が苦手、相手の感情や状況を想像することが難しい」自閉症スペクトラム障害のSさんの就職支援事例

事例紹介 2022.09.26

就労移行支援事業所のヴィストキャリアでは、障害のある方への就職サポートをチームで行っています。

今回は場面に応じた行動が苦手、相手の感情や状況を想像することが難しいとおっしゃる自閉症スペクトラム障害のSさん(仮名)の事例をもとに、ヴィストキャリアでの支援をご紹介します。

ヴィスト利用開始時のSさんの状況

画像はイメージです

Sさんは20代の女性。自閉症スペクトラム障害があり、親しくない人とはなかなか会話することができずにいました。

学校は普通科を卒業していますが、保健室登校の時期もあり、進路を決めることができず進路指導の教員が本人の想いを聞こうとしても聞くことができずにいました。

家庭では普通に会話していて、障害について家族は理解できず、ご本人も勉強ができ成績や出席率もとれているので、学校生活での困り感がありませんでした

就労経験はなく、卒業後とりあえず働かなければという周囲の呼びかけに応えるべく、アルバイトのため就活を行いましたが、面接の度にうまく話せず、就職できずにいました。

学生時代の先生に受診を勧められ、ヴィストキャリア金沢駅前を知り見学・体験を経て利用が決まりました。しかし、ご本人・家族ともに障害理解が進まず、障害福祉サービスの事業所に通うことに躊躇がありました

ご自身の認識では「人より少し人見知りが強いだけで、慣れれば何でもできるようになる」というもので、家族も「とにかく面接が通れば働けるはず、就職さえすれば何とかなる」と考えていたことから、何でもいいから早く就職してほしいという家族からのご本人へのプレッシャーはかなり強いものでした。

自閉症スペクトラム障害の方が就労につながるまでの流れ

Sさんは以下のような流れで就労移行支援を利用し、就職につながっていきました。

1:利用開始・アセスメント面談
2:プログラムの受講
3:求人検索・見学・実習
4:面接
5:軽作業工場へ就職

詳しく見ていきましょう。

1:利用開始・アセスメント面談

まず利用を開始してすぐに、スタッフとの面談を行います。

面談では、ご本人が希望する職種や環境はもちろん、そこに紐づくご本人の人生観や理想の生活スタイルなども確認しながら具体的な行動計画をご本人と一緒に話し合っていきます。

ここで大切なのはあくまでもご本人を主体として、ご本人自身の望むことを形にすることです。

Sさんは高校卒業後ほどなくしての利用のため、就労経験がなく、就職に関する希望などもありませんでした。

また、障害名も後になって知ったため、障害理解だけでなく自己理解もままならない状態でした。

そのため「仕事で自分に何ができるのか」や、「就職する際に必要なことや大事なこと」が分からず、困り感もなく、開始当初は働くことを想像できずにいました。

しかし、唯一の希望として、ご家族の方が働く介護系の職業を希望していました。

2:プログラムの受講

「就職準備」「JST」「パソコンスキル」「ASAトーク」などのプログラムを受講します。

プログラムは集団でクラスのような雰囲気で受講することもできますし、タイミングが合わなかった場合や、大勢の中での受講が難しい場合は1対1で受講することも可能です。
Sさんの場合は就労経験がないため、まずは就職準備で就活のイロハを学び、また障害枠の求人について触れながら自己理解を深めてもらいました。

また、会話を発信することは苦手なものの、聞くことは好きとのことで、まずはコミュニケーションに慣れ、他人がどういった話をするのか、どうリアクションをするのかなどを知ってもらうため「JST」「ASAトーク」といった様々なコミュニケーションプログラムに参加していただきました。

ヴィストでのプログラム参加のイメージ

それも、まずはオブザーバーとして見学する形で受講しはじめ、少しずつ慣れてから本格的に参加するようになっていきました。

※JST・・・Job related Skills Trainingの略:職場でのコミュニケーションスキル向上プログラム
※ASAトーク・・・毎週月曜日定期開催、休日明け月曜日の憂鬱さの軽減を目的としたコミュニケーションワーク

参考:ヴィストキャリアのプログラム紹介
https://visst.co.jp/career/info/program/

3:求人検索・見学

Sさんは介護職希望が決まっていたものの、現場をほぼ知らなかったため、まずはインターネットや求人媒体紙(タウンワークなど)を利用して求人検索を行いました。

画像はイメージです

どのような仕事があり、どのように掲載されているのかをご自身で調べて頂き、その後実際に見学に行くことを勧めました。

併せて、介護以外の可能性も考えられるよう、様々な職業についてもご本人と相談し見ていくこととしました。

Sさんは特性から「想像すること」が難しいという面があり、実際の仕事内容や環境を肌で感じることを大切にしていました。

4:面接

見学にて実際の現場を確認後、スタッフと相談を経て、実際に応募するかを決めます。応募に進む場合、応募書類や面接などの対策をしていきます。

Sさんは親しくなると会話が進むのですが、初対面ではささやくような声しか出ず、聞き返してもなかなか伝わらないうえ、表情を見られることを強く避けていた為、ご本人の意思表示が相手に伝わりにくい難しさがありました。

画像はイメージです

何度も事業所で面接練習を行い、ご本人ができる対処を行いながらも、見学での印象から企業にコミュニケーションが難しいとの判断があり、なかなかご本人の望む求人が面接に結びつくことができないでいました。

5:軽作業工場へ就職

当初、介護職を希望していたSさんですが、実際に仕事現場を見学・体験し、内容を知っていく中で、介護職はコミュニケーション力が必須であることを知り、今の自分では難しいことも理解されていきました。

しかし、夢を諦めるのではなく、今自分にできることとして就労経験を積み、仕事のノウハウやスキルをつけていき、将来その職種へ行ける力をつけたいと考えるようになったそうです。

画像はイメージです

その後は様々な職種の現場見学・体験を経て、今の自分ができる仕事を知りご自身で求人検索をどんどんすすめていきました。

その中で見つけた軽作業工場でのお仕事にご自身で応募し、面接、見事採用に繋がりました。

就職に向けて困難だったポイントと解決方法

Sさんは、相手に自分がどのように写っているのかを客観視すること、今の状況が今度どうつながるのかを想像することが難しく、「場面に応じた行動が苦手」でした。

就職マナーなどで知識はつくものの、実際の場面になると応用が利かず、臨機応変な対処が難しい問題がありました。また、親しくない相手との会話を避けるため、職場で必要な報連相も慣れるまではなかなかできずにいました。

しかし、事業所での日々の取り組みや職場体験を通し、ご本人に変化が見られるようになっていきました。

経験を積むことで自信がついていき、報告も自ら適切なタイミングでクッション言葉を利用しながら行うことができ、コミュニケーションワークでの発言もご自身の言葉で相手に伝わる声量で発信できていきました。

それでも周囲からは一般的な就職スキルとしては少し心配かな……という面もありましたが、ご本人の中では実体験を通して周囲には見えない成長をしており、しっかりと自分の力で就職をされました。

このようにヴィストではご本人の可能性を引き出すために様々な、「実践の機会の場」を提供することを大切にしています。

ヴィストでの面接同行時のイメージ

ヴィストキャリアでは随時見学・相談を受付しています

「自己流で就活してきたけど、うまくいかない」

「働きたい気持ちはあるけど、働き続けられるか不安」

「どうしてもこの仕事がしたいけど、どうしたらいいのかわからない」

そんな不安やお悩みはありませんか?

一人で悩まず、まずはヴィストキャリアにご相談ください。

ヴィストキャリアでは「ES(Employment Specialist)」と「CM(Case Manager)」というスタッフを配置し、スタッフの専門性を活かした支援を行っています。

ESとCSは以下のような役割分担となっています。

「ES(Employment Specialist)」:就職活動サポートのスペシャリストとして、利用者さんと地域企業とのつながり構築に関わります。

「CM(Case Manager)」:就職活動に限らず、生活面での不安や悩みの個別相談に応じ、職業生活の土台づくりに関わります。

お一人でも、ご家族や相談支援員さんとの見学も大丈夫です。

さまざまなお悩みや就職サポートをしてきた就労支援員が、次の一歩を踏み出せるようお話を伺います。

ご相談・見学のお申し込みをお待ちしています!

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