鉛筆の持ち方や操作が気になる子どもたちの支援①-活動編-
ヴィストカレッジスーパーバイザーの渡邊です。
現在、ヴィストカレッジでは未就学児~高校生までの方を支援させて頂いておりますが、特に未就学児~小学生では「手先が不器用なんです」という相談も多くあります。
詳しく聞いていくと、
・鉛筆がうまく持てない
・スプーンやフォークをうまく使えず、すぐに手づかみになってしまう
・エジソン箸(トレーニング用の箸)は使えるが普通の箸になるとうまく使えない
・ボタンをうまくかけられない
などがニーズとして挙がってきます。
今回は、鉛筆の持ち方や操作が気になる子どもたちに、ぜひ実施して頂きたい活動をご紹介します。
鉛筆操作には「触覚」や「固有感覚」の働きが必要
子どもは1歳をすぎると道具を持ち始めます。
その中の一つがクレヨン。クレヨンを全部の指で握って、紙の上をトントンと叩いたり、殴り書きをします。
2歳ころになるとクレヨンを指先で持ち始め、2歳半頃には「〇」の形も書き始めます。
その後、少しずつ正しい持ち方に近づき、4歳半頃には指先を動かしながら、興味のある文字なども書いたりします。その頃にはクレヨン以外に、鉛筆や色鉛筆なども使用するようになります。
ただ、うまく鉛筆を持てなかったり、筆圧が濃かったり逆に薄すぎたりという場合は、道具を把持する際に必要な触覚(鉛筆の太さや鉛筆と接触している部分を常に感知している)や、書く際に必要な固有感覚(関節の動きや力の加減を感知している)をうまく使えていない可能性があります。
逆に言うと、触覚や固有感覚をしっかりと使う経験をしてもらうことで、鉛筆操作の向上につながります。
「触覚」や「固有感覚」を育てる活動の例をご紹介します
まず、触覚や固有感覚をしっかりと使う活動を経験してもらうことが大切です。
例えば、粘土・小麦粉粘土・砂粘土遊び・土や泥遊び・フィンガーペインティング・スライム遊び等があります。様々な感触の物を触ったり、てのひら全体でぎゅーぎゅーと力を入れたりする経験がとても大切です。
小学生になると、そうした遊びはなかなか学校ではできないということがあると思います。
その場合でも、家のお手伝いの中でおにぎりやハンバーグを作ったり、キャベツやレタスをむいたり、可能であればうどんやピザ・パン作りなどを親子で一緒にやってみるのも良いと思います。
道具の操作には“手のアーチ”も大事
そして次に必要になるのが、手のアーチ作りです。
足のアーチは良く聞かれると思いますが、足だけではなく、実は手にもアーチがあります。手のアーチは目の前の野球ボールを手でつかもうとした時に、手に作られる丸みのことを言います。
詳しくお伝えすると、手には3つのアーチ、横のアーチ、縦のアーチ、斜めのアーチがあります。このアーチがあるからこそ、うまく物を把持したり手指を使ったりできるのです。
手で道具をうまく操作するためには、手のアーチを作ることが非常に重要になります。
手のアーチを作る活動の例をご紹介します
手のアーチを作るためには、手のひら全体で体を支えたり、手のひら全体に力を入れて握ったり、抵抗のあるものを摘まんだりする活動が大切です。
手のひら全体を使う運動の例
手押し車、はいはい(キャタピラ)等の活動では、手のひら全体で体を支える練習ができます。
手押し車でうまく体を支えられない場合は、足首ではなく太ももを持ってあげると体を支えることができる子どももいます。
また、雑巾絞り、ジャングルジム、新聞を丸めてボール作り、粘土等の活動を行うことで、手のひら全体に力を入れて握ることを促すことができます。
抵抗のあるものをつまむ運動の例
抵抗のあるものをつまむ活動には、紙を指先で破る・ミカンを剥く・コイン入れ・洗濯ばさみ・プチプチつぶし・ホッチキス・指相撲・輪ゴム鉄砲・こま遊び等があります。
一緒に活動を実施したり、テーブル拭きや靴下干し等のお手伝いとして実施してもらいながら、子どもに達成感を持ってもらうことを大切に取り組んで頂けたらと思います。
手首の動きを促す運動の例
また、鉛筆を操作する上で手首の動きも大切であり、うちわでボールを転がしたり、タオルを回したり、鳴子等で手首の動きも促す活動もすると良いでしょう。
さいごに
今回は、鉛筆の持ち方や操作が気になるお子さんへおすすめの活動を紹介しました。
鉛筆操作をはじめ、お箸など手で道具を使う活動をスムーズに行うには、「触覚や固有感覚を育てること」「手のアーチを作ること」が大切になってきます。
今回紹介した活動を参考に、ぜひ、園や学校、また家でも子どもが取り組めそうなものから始めてみてください!!
ただし「触るのが苦手」という子どもには決して無理矢理させることは避けましょう。
できる活動から始め、やりたい活動を自分で選択してもらったり、段階付けしたりしながら、楽しく実施して頂けたらと思います。
執筆者:渡邊純子
ヴィストカレッジスーパーバイザー。作業療法士、特別支援教育士の資格を持つ。子どもの病院や療育センターでの勤務や青年海外協力隊(パキスタン、ネパール)での活動、作業療法士の養成校にて講師等の経験を持つ。地域では教育相談や療育相談、支援学校等に関わる活動を行っている。