【運動例あり】座位を保つための土台「体幹」鍛えよう!!-園や学校での活動に生き生きと参加するために-
ヴィストカレッジスーパーバイザーの渡邊です。
ヴィストカレッジでは、今年度令和4年度から保育所等訪問支援事業を開始しました。
園や学校へ訪問させていただき、保護者さんのニーズに基づいて、先生と一緒に支援方法を考えています。
また、私自身、地域の療育相談や特別支援学校等にも関わらせていただいており、保護者さんや地域の保健師、支援学校の先生方の困りごとをお聞きする機会もたくさんあります。
その中の相談の一つに、
「授業中、姿勢が悪いんです。しっかりと座っていられなくて、どうしたらいいですか?」
「何をするにもすぐに疲れるんです」
「家でもゴロゴロと横になっていることが多くて、心配です」
というご相談をたくさん頂きます。
最近は、コロナ禍で外に出ることも少なくなり、運動する機会や頻度が減ったとも親御さんからよく聞きます。
しっかり座っていられない、横になっていることが多い、すぐに疲れる、などの問題の背景には、座位(座った姿勢)を保つ筋力が弱いことが考えられます。
園でははさみや糊を使ったり、給食で箸やスプーンを使ったりします。学校では鉛筆、ものさし、コンパス等の文房具を使ったり、先生や他児の話を聞いたり等しますが、いずれのシーンでも椅子に座り続ける能力が必要になります。
座位の姿勢が崩れていると、道具を使ったり手を使ったりすることがスムーズにできなくなったり、先生の話を集中して聞くことが難しくなってしまいます。それが繰り返されると、学習意欲にも影響してきます。
反対に、「座位の姿勢」をしっかりと保つことで、手が使いやすくなります。座位を保てるようになると、学習に参加しやすくなり、集中して活動に取り組めるようになります。
座位を保つためには?
では、座位を保てるようにするにはどうしたらよいのでしょうか?
座位の姿勢を保つためには、主に「前庭感覚」「固有感覚」「触覚」の3つの感覚が必要になります。
意識しやすい視覚や聴覚、嗅覚、味覚とは違い、ほとんど自覚せずに使っている感覚ですが、座位の姿勢を保つ以外にも、服を着たりスプーンや箸を使ったり、様々な文房具を使う時も、大事になる感覚になります。
3つの感覚についてそれぞれ説明します。
座位を保つために必要な感覚①「前庭感覚」とは?
前庭感覚とは、頭の傾きなどを感じる感覚です。
主に身体のバランスをとる時に働く感覚で、姿勢のコントロールに関わっています。
その他にも、覚醒を調整したり、黒板を見るための眼球運動を安定させる働きもあります。
自分の身体が右に傾いたときは、頭の傾き(前庭感覚)と筋肉の張り具合(以下に述べる固有感覚)の変化から、傾いたことを感知して、左側の筋肉の張り具合を高め、頭を垂直に保つように調整します。
座位を保つために必要な感覚②「固有感覚」とは?
固有感覚とは筋肉や関節を通じて力の入れ具合を感じる感覚です。
力を調整したり、抗重力に姿勢を起こしたりするために非常に大切な役割を担っています。
座位を保つために必要な感覚③「触覚」とは?
触覚とは皮膚から入ってくる情報、物の形や素材の違いを識別する感覚です。
「座る」という行為は、お尻や足底からの入力される触覚を手がかりに行っています。
3つの感覚を使えるようになるには?
座位を保持するために必要な「固有感覚」「前庭感覚」「触覚」を使えるようになるためには、全身を使った活動、特に「体幹」を使う運動をすることが大切になります。
そこで、今回は、座位保持を促すために、園や学校で簡単にできる体幹の運動を紹介します。家でもできるものになっていますので、親御さんも一緒に取り組んでいただけたらと思います。
「体幹」を鍛えるための運動
座位の姿勢を保つためには、体全体(体幹)に力を入れる運動・重力に抗する運動、また、バランスが必要な運動をすることが必要になります。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
体全体に力を入れる運動・重力に抗する運動
体全体に力を入れる運動・重力に抗する運動の例としては、以下のようなものがあります。
・手押し相撲(手と手を合わせて押し合う)
・タオル相撲(タオルを引っ張り合う)
・手押し車
・キャタピラ
・その場でジャンプ
・ギッタンバッコンシーソー
・グーパージャンプ(2人ペアになり、1人は座って一人は座って足を開いたり閉じたりします。もう1人は立って、相手の足の動きに合わせて、跳びながら足を開いたり閉じたりする遊び)
・雑巾がけ
・動物歩き(馬、ワニ、くま、くも、あざらし等)
・鉄棒(豚の丸焼き、コアラごっこ)
・飛行機(うつ伏せで手足を挙げ体を反らせる)
バランスを促す運動
バランスを促す運動の例としては、以下のようなものがあります。
・タオルを頭に乗せて歩く・走る
・片足立ち(かかしの姿勢、ロケットの姿勢)
・つま先立ち歩き・かかと歩き
活動するときのポイント
活動を提供する時のポイントとしては、
・同じ活動を単調に繰り返すのではなく、段階づけを行う(回数や秒数を増やしていく、距離を長くしていく)
・ゲーム的な要素を入れ、楽しく、達成感も持ちながら取り組めるようにする
といったことが挙げられます。
覚醒レベルが低いお子さんが目を覚ますためにも有効です。
また、園や学校での活動中は、道具を取りに行ったり、教材やプリントを配ったり、黒板に出てきてもらい書いてもらったり等、ずっと座り続けるのではなく、途中で立つ機会を作って頂き、動きを入れながら活動を実施することも大事になります。
ぜひ、できそうなことを実践してみてください!!
[参考文献]
川上康則(2015)『発達の気になる子の学校・家庭で楽しくできる感覚統合あそび』 ナツメ社