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不登校の入り口「園や学校への行き渋り」への対応方法は?

学校連携 2025.06.03

「園や学校に行きたくない」と子どもさんから発信があった時、どのように対応すればいいか?と相談に来られる方は年々増加しています。特に、長期休暇明け(ゴールデンウィークや夏休みや冬休み)は要注意な期間です。今まで学校生活で緊張しながらも子どもが自分を誤魔化しつつ生活していたのに、長期休みの期間をきっかけに緊張の糸が切れてしまうからです。

令和5年の文部科学省の調査では、年々不登校の子ども(文部科学省の不登校状態の定義は「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくてもできない状態にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者」)は増加しており、令和5年で一番多くなっています。不登校の定義が「年間30日以上の欠席」なので、相談室登校や放課後登校と行った特別な配慮を受けながら登校している児童生徒は除かれているため、本当の意味での「不登校ニーズ」のある子どもはもっと増えていると思います。

「なぜ、不登校が増えているのか?」いろんな研究者がさまざまな議論をしていますが、同一した意見は「要因は一つではない」「環境の影響が大きい」ということです。子どもの個人的要因も少なからず影響はしていますが、それを容認する社会が不登校ニーズを持った子どもに合わせたスタイルに育っていないことが最大の理由であると、私も考えます。

それでは、不登校の入り口である「登校しぶり」が始まった時、親や支援者(先生など)はどう関わったいいか?を、発達障害の専門家の観点からご説明します。

登校渋りの「大人」の捉え方と「子どもの捉え方」の違いを知る

「園や学校に行きたくない」と子どもから発信があった際に、大人と児童生徒の捉え方にギャップがある可能性があります。

大人の視点

・登校しぶりは、まだトラブルの起点
・子どもが努力すれば、行けるはず
・学校が何かを変える必要はない
・大人が心配なのは欠席している時の勉強の遅れ

子どもの視点

・登校しぶりは子どもにとって最終地点
・努力はしたけど、「もう限界!」
・自分が通えるように、学校に配慮してほしい
・つらすぎて、勉強どころではない

特に、発達に偏りがあったり、発達障害を持っている子どもにとって、学校という環境自体がその子どもにあっていない可能性があります。

例えば、自閉スペクトラム障害(以下、ASD)の子どもの感覚問題に関して考えてみます。ASDのお子さんで、聴覚過敏を持っている子どもは多くいらっしゃいます。感覚過敏と本人の「不安感」に影響が大きいことも研究で報告されています。

学校では多くの環境の変化の場面があります。入学時には小学校への入学で知らない子どもとの交流や知らない先生からの指導、年度の途中には席替え替え、クラス替え、中学校への進学などです。そういった不安の中で、休み時間の「子どもたちの声」や自分に対して、また他の子どもに対しての「先生の叱責の声」は子どものストレス度をあげます。

また、ASDの子どもの「こだわり」に関して考えてみます。順番にこだわりを持っていたりすると、学校の授業の時間割が変わることが大きなストレスだったりします。特に、好きな算数が1時間目にあるから学校に来たのに、学校の行事の影響などで5時間目になったりすると、「好きな授業を受けるのに午後まで我慢しないといけない」と本人のその1日は苦痛なものになるかもしれません。特に、体育祭や学習発表会などイベントごとのある時期は、不安定になるお子さんの話をよくお聞きします。

また、「こだわり」の中でも「白黒思考」を持った子どもは「遅刻するくらいなら学校に行かない」は「あの先生は好きじゃないから先生と一緒に勉強するくらいなら行きたくない」と考えたことのある子どもの話を聞きます。

ASDを含めた、発達障害や発達に特性を持つお子さんは、「能力が低い」のではなく「色々な能力に高低のさが大きい」ことが、生活のしにくさにつながっています。上記に示したような、生活のしにくさが積み重なり、「学校に行きたくない」という言葉一つに表現されていると考えるべきでしょう。

行き渋りが始まった時の対処方法

① 子どもの言い分に「一理ある」と、まず保護者が理解する

発達障害や発達に特性のある子どもたちの文化を理解しようとする保護者のスタンスがまず大切です。上記でも述べたように「何か一つの理由で登校を渋る」子どもはいません。何らかの不適応要因が重なって、登校しぶりの状態になります。特に園児や小学校低学年では、獲得している言葉が少ないこと、それを言語化する力を持っていないため「めんどくさい」などの表現で示されることが多いと思います。しかし「めんどくさい」の奥には、多くの登校しぶりになる要素が詰まっているため、ただ「学校に行きなさい」では、改善はありません。本人を理解する姿勢が必要です。また、「めんどくさい」と子どもから言われたとき、めんどくさい理由の原因探しを子どもに対してするとかえって逆効果になることもあります。「めんどくさいと思う時もあるよね」と本人の言い分にも一理ある、という親の姿勢がまず大切です。

② 学校との連携を密にとる

発達障害や発達に特性のある子どもにとって、学校という環境のどの部分が苦痛になっているのか?学校の担任や学年主任、また、小学校では「特別支援コーディネーター」の先生が必ずいらっしゃいます。学校の様子は親は把握ができないので、子どもの学校での様子を聞き取りしたなかで、原因と思われることを、学校がどの程度配慮してもらえるかを相談することが必要です。

学校の中で「子どもが嫌だと思う友達」がいたら、学校=嫌な友達に会う場所、と思っているかもしれません。そういった時に、学校として「臨時席替えタイム」を実施してもらえるか(ある特定の子どもだけ配慮すると別な問題が発生する可能性もあるため)、体育の授業がどうしても嫌な子どもの対して体育の時間に「体育には参加しなくていいけど、先生のサポート係をやってもらう」などの配慮をしてもらえるか、また、休み時間の賑やかな音が苦手な子どもに対して、別な場所での活動の保証(校長室や保健室など)をすることができるかなど。

学校は校長権限で決められる範囲と、それ以外の部分でできることが決められます。学校と相談をし、まずどこならできそうか?を相談することです。

一番やってはいけないのは「子どもの前で学校や先生の悪口を言ってしまう」ことです。学校との相談は保護者さんにとって非常に労力がかかることだと思います。保護者さんのストレスも上がってしまうと思います。ただ、それを子どもの前で言ってしまうと、子どもも学校にネガティブな影響を深く与えてしまうことになる可能性があります。子どもの前ではグッと我慢です。

③ 親や先生が改善しようとする姿を子どもに見せる

登校しぶりが始まった時、信頼できる大人の姿が重要です。特に、園に通っている子どもや、小学校低学年の児童は、自分から言葉で先生に伝えることはなかなか難しいと思います。大人、特に親が、学校に相談し、学校の環境を子どもにとって過ごしやすい場所を作る努力をしている姿を子どもが知ることで、安心感が生まれます。

私が担当していた子どもで登校しぶりのあった子どもが、学校と相談し昼休みの過ごし方がわからず、1人でいるのが苦痛、他の人の声は苦痛であることがわかりました。そのお子さんが家では兄弟や家族で「UNO」というカードゲームをすることが好きで、保護者が「昼休みに「UNO」をしてもらえないか」と提案したそうです。最初は先生と2人でやっていたそうですが、そのうち、他のお友達も参加するようになり、半年後には先生なし(教室の中にはいる)でみんなと「UNO」をするのが毎日の習慣になり、学校で「UNO」をすることを楽しみに行くことができるようになったそうです。もちろん、他の要因が解決したわけではないので、登校しぶりが続いているそうですが、今では本人のペースで学校にもいけるようになっているすです。

「UNO」を取り入れる際も、「保護者が「UNO」を先生がやってくれるみたいだよ」という言葉と、実際にそれを実施してくれた先生の存在があり、実現に至ったことだと思います。

「行き渋り」の背景を知り、「学校に行かない人間はダメな人間」という価値観を見せない

行き渋りがあり、学校を不定期に休むようになりながらも、学校に行く子どもも一定数いらっしゃいます。それは、本人の努力ではどうにもならないラインギリギリを綱渡している状態だと思います。

発達障害や発達に特性のあるお子さんは、「真面目」なお子さんが多いのではないでしょうか?不真面目で学校に行かない選択肢を選ぶお子さんは多くはないです。本人の意思を尊重しながら、学校と相談し登校のペースや、行事ごとへの参加など決めていくのがベストです。

言ってはいけないのは、家にいるときに「明日、学校に行くんだったら◯◯をやってもいい」や「学校のある時間は家でも時間割通りに勉強しなさい」など、学校に行くこと=善と思われるような発言をすることです。

子どもは今の現状を何とかしたいと思っているはずです。お家が「リラックスでき、自分の居場所」と感じられると、学校で頑張る力が生まれるかもしれません。子どもを信じて子どもの自己選択をどこまで許せるか?親の力の見せ所ではないでしょうか?

学校との連携や、学校に関しての相談など、学校の代わりに「関係機関連携」という制度のある「放課後等デイサービス」があります。保護者が頑張りすぎず、チームで子どもを支えていくのが本来の「チーム学校」だと思います。

ヴィストカレッジ(放課後等デイサービス)は、学校連携の得意な事業所です。もし、お困りの際はお気軽に相談を。

次回は、では「不登校になってしまったら」をテーマに話を進めていきたいと思います。

 

執筆者:林原洋二郎
ヴィストカレッジ ディレクター。公認心理士。富山大学大学院人間発達科学部修了(教育士)、金沢大学子どもの心の発達研究センター研究員。富山福祉短期大学非常勤講師。物流企業の営業職、広域通信制高校センター長を経て現職。発達障害の就労支援と発達に特性を持つ子どもの療育(発達を促し、自立して生活できるように援助すること)に従事。『放課後等デイサービスにおけるプログラミングを利用した自己肯定感を育む支援』(日本教育工学会論文誌/2021)など多数執筆。

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