子どもの園や学校での様子がよくわかる!園や学校との事業所の連携の大切さと連携方法

お母さん、お父さんの皆さんは、学校での子どもの様子は気になりませんか?では、それが分かるのはどんな時でしょうか?学期末の「通票渡し」の時、またはお子さんが何かしらのトラブルを起こした際に学校から「呼び出し」の連絡があった時など、回数は限られており、また、あまりポジティブな内容を先生からお聞きになることは少ないのではと想像します。
私は2025年2月にニュージーランドを訪問しましたが、ニュージーランドの保育園や小学校でも、教室ごとに「カメラ」が設置しており、保護者がその映像をパソコンやスマートフォンで見れるような仕組みを作っているとのことでびっくりしました。
学校と園との連携に関しては、令和6年に文部科学省、こども家庭庁、厚生労働省が連名で出された「地域における教育と福祉の一層の連携等の推進」の中で「障害や発達に特性のあるこどもやその家族への教育と福祉等が連携した支援については、 障害や発達の特性を早期に発見・把握し、適切な支援・サービスに つなげていくとともに、乳幼児期・学童期・思春期の支援から一般就労や障害者施策への円滑な接続・移行に向けた準備を、保健 、医療、福祉、保育、教育、労 働など関係 者の連携の下で早い段階から行っていくこと」とその必要性を述べています。
学校や園との連携のメリットは?
① 学校や園での様子がわかる
「支援ニーズを踏まえた放課後等デイサービスのあり方の検討」(2021年、林原等)で、「保護者が放課後等デイサービスの支援で満足していること」のアンケート調査を行っています。

その調査結果の中で、「子どもの支援」と「保護者の支援」で優位になったのは「学校との連携」に関わる部分でした。
序論で述べたように、学校の様子を担任の先生から聞ける機会は限られています。さらに、特別なニーズを持っているお子さんの場合、さらに子どもの様子を知りたいという保護者の方が多いことがアンケート結果でもわかります。
放課後等デイサービスの事業所では「関係機関連携加算」で連携を行った事業所を報酬面で評価する仕組みもあり、今後より多くのお子さんの学校や園での連携が期待されています。
厚生労働省が報酬改定の議論の中でも「福祉事業所と学校や家庭の連携」を行っている事業所に関して、さらに評価をしていく議論がおこなわれています。
子ども家庭庁は、『こどもと家族を中心 に据えて、包括的なアセスメント・支援を行うことが必要であり、各事業所や各関係機関それぞれが、非連続な「点」として独自に支援を行うのではなく、子育て支援施策全体の連続性の中で、地域で相互に関係しあい連携しながら「面」で支えていく必要がある。こどもの ライフステージに沿って、地域の保健、医療、障害福祉、保育、教育、社会的養護、就労支 援等の関係機関や障害当事者団体を含む関係者が連携を図り、切れ目のない一貫した支援 を提供する体制の構築を図る必要がある』(2024年、子ども家庭庁)と述べ、学校や福祉事業所が、その子どものキャリア全体を捉え連携することの必要性を述べています。
② 学校と福祉事業所の支援の統一
学校で特別に配慮が必要なお子さんには、支援級、通級指導教室の利用の有無にかかわらず、「個別の指導計画」の立案と保護者への同意が義務化されました。(2008年、文部科学省)
また、児童発達支援事業所や放課後等デイサービスには「個別支援計画」の作成を行い、6ヶ月に1回の頻度で見直しを行うことが義務化されています。さらに、福祉事業所を利用するために、相談支援事業所では「サービス等利用計画」があります。それぞれの学校や事業所が別々に支援を行うのは、支援を受ける子どもや保護者にとって、それぞれの方向性が異なる時「誰の言うことが正しいの?」という混乱を生む事態も想像できます。
そのためにも、それぞれの担当者が、一同に集まりそれぞれの支援の方向性を合わせる必要があります。そのためにもお互いが連携していくのは必須です。

しかし、一方で、連携において困難な課題があることもわかっている。(2018年、村山)
(1) 学校・教員の側の意識と事業所の側の意識
放課後等デイサービスについての理解が学校・教員側に乏しかったり、学校・教員側が連携に消極的であったりすると、学校の連携は進みにくいものです。
また、放課後等デイサービスの増加と共に、認知度は上がっているが、「事業所と連携することのハードルは高い、何をしてくれるのか、どう連携していいかわからない」という教員側の意見もあります。
大切なのは、「お互いを知る」ということではないでしょうか?学校で行っている指導内容や子どもの様子の共有、事業所の支援内容や事業所での子どもの様子の共有が最も大切だと考えます。
(2) 連携のための時間の確保
連携のためには時間を合わせて、内容を共有する時間を作る必要があります。連携を困難にしているのは、子どもの教員・支援するコアタイムが、学校と事業所が異なっていること。連携を可能にする時間的な最善策は、学校の授業の時間帯に先生が抜けるのは現実的ではなく、放課後の時間帯に、放課後等デイサービスの「管理者」や「児童発達管理責任者」など、福祉事業所で支援に入らないスタッフが学校で実施だと思います。
また、保育園や幼稚園では、園の人員配置の工夫などで、やりやすい実施時間で行うことができるかと思われます。ただ、この時間の工夫なども、学校側、園側、事業所側が連携の必要性を把握し、お互いに忙しい中、時間を捻出するお互いの歩み寄りが必要になると思います。
連携する方法
児童発達支援や放課後等デイサービスの契約者は「保護者」になっていることがほとんどです。(18歳以上は子ども本人)
個別支援計画に「学校との連携」を盛り込みます。その上で、下記のように丁寧に進めていく必要があります。
① 保護者の「学校との連携」の意思の確認
② 保護者から「連携依頼書」を保護者経由で学校の校長か教頭にお渡しする
③ 保護者が、学校に「連携依頼書」を渡したことを、福祉事業所に連絡する
④ 福祉事業所が学校に連絡し、日程調整を行う
⑤ 日程が決まったら、連携を実施
⑥ 連携後、保護者に連携の内容を共有する
連携も単発で終わることなく、ステージが変わるとき(進級、進学、就職)に継続的に行っていくこと、また、困難ケースの場合は定期的に支援を行なった成果を確認していくことが必要です。
いずれにしても、「学校や各事業所の役割分担」を行い、支援の共有を図ることが重要だと思います。
保護者が「抱え込まない」ことが大切!
学校やご家庭で子どもが困難な場面があった場合、保護者が抱え込んでいかないことが大切です。現在、学校でも「チーム学校」の中で、特別のニーズを持つお子さんにとって、心理職である「スクールカウンセラー」、社会福祉士など「スクールソーシャルワーカー」が設置義務を設けたり。「作業療法士」協会から作業療法士を派遣するような事業が各地でも進んでいます。
福祉事業において、学校や園と気軽に連携できるのは「放課後等デイサービス」や「児童発達支援事業所」です。
事業所を利用している方もされていない方も、まずはヴィストカレッジのお近くの事業所に気軽にお尋ねください!


執筆者:林原洋二郎
ヴィストカレッジ ディレクター。公認心理士。富山大学大学院人間発達科学部修了(教育士)、金沢大学子どもの心の発達研究センター研究員。富山福祉短期大学非常勤講師。物流企業の営業職、広域通信制高校センター長を経て現職。発達障害の就労支援と発達に特性を持つ子どもの療育(発達を促し、自立して生活できるように援助すること)に従事。『放課後等デイサービスにおけるプログラミングを利用した自己肯定感を育む支援』(日本教育工学会論文誌/2021)など多数執筆。