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インクルーシブ教育の実現に向けて、私たち大人ができること

インクルーシブ教育 2024.02.13

皆さんご存知でしょうか?

令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます。

令和3年に障害者差別解消法が施行され、「障がい者への不当な差別的扱い」に関しては、「行政機関等」「事業者」ともに禁止されていたのに対し、合理的配慮に関しては「行政機関等」は義務、「民間業者」に関しては「努力義務」でしたが、障害者差別解消法の改正に伴い、「民間業者」も義務化されます。

これにより、教育界はどのように変わるでしょうか?

合理的配慮とは?

そもそも、合理的配慮とは、「日常生活・社会生活において提供される設備やサービス等について、障害のない人は簡単に利用できても、障害のある人にとっては利用が難しく、障害のある人の活動などを制限しているバリアを取り除く必要があり、行政機関等と事業者が障害者からバリアを取り除いて欲しい旨の意思の表明があった場合に、その実施に伴う負担が荷重でない時に、社会的バリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること」を言います。

出典:内閣府 リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」

令和3年のこの法律は、2008年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」が元となっており、「教育についての障害者の権利を認める。締結国は、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容するあらゆる段階の教育制度(inclusive education system)及び生涯学習を確保する」という箇所がインクルーシブ教育の根拠になっています。

- 障害者権利条約 国連からに勧告(一部)2022

合理的配慮が進まないのはどうして?

合理的配慮が満たされた状態とは、必要な人にとって必要な量の支援が行き届いている状態のことです。

数年前に保育所等訪問支援員としてある学校に訪問した際、授業中に計算が苦手な子どもに先生が計算機を使うことを勧め渡そうとしました。「計算機を使う」行為は合理的な配慮にあたります。しかし、周りの子どもたちが「⚫︎⚫︎君だけずるい」と言い始めました。その際に、先生が学校の中での合理的配慮の必要性を子どもにわかりやすく説明したり、他の子どもに対しても「使いたい人は使ってもいいよ」と伝えたりすることによって、「⚫︎⚫︎君だけがずるい」という状態が回避でき、さらに他の子どもたちへも説明できるチャンスであったにも関わらず、先生は何もいうことなく、⚫︎⚫︎君が「⚫︎⚫︎君だけずるい」という言葉を気にして計算機を先生に返してしまいました。私は、授業の後に⚫︎⚫︎君に「計算機を使うことはずるいことではないよ」と伝えましたが「みんなに言われるからもう使いたくない」とチャンスを逃してしまう結果になりました。

インクルーシブを進めて行くためには、マジョリティー(多数派)の方達が、現在の社会の中で「自分たちが特権を持っている」ことを知る必要があります。

出口(2021)は、「『マジョリティー性』を多く持った人たちが、自ら優遇されていることに気づかない限り、真の意味でのインクルージョンは望めない」「私たちはマジョリティー性とマイノリティー性の両方を持ち合わせて生きているが、マジョリティー性を多く持った人ほど無自覚である」と言っています。

 今回のケースでいうと、「⚫︎⚫︎君だけがずるい」と言った子どもと、それを見逃している教員が「自分がマジョリティー特権を有している」という自覚に欠けた状態であると言えると思います。

合理的配慮を教員や周囲の大人がマジョリティーの子どもたちにどう伝えていくかが鍵

よく、障がいを説明するのに「メガネ」の事例が挙げられます。「裸眼で0.01の人が、外出しようとすると何も見えず、視覚障がいであるが、メガネをすることで1.0以上に回復し障がいの状態ではなくなる」ただ、現在で考えると「メガネ」を欠けた状態はマイノリティー(少数派)ではないため、インクルーシブを説明する例にはなりません。

インクルーシブの世界を実現するためには、まず、子どもの特性を大人が理解する必要があります。「計算が苦手」「読むのが苦手」「書くのが苦手」「コミュニケーションが苦手」など、その子どもが「どの部分が苦手であるか?」「どうしてその部分に苦手があるのか?」を理解することです。その上で、教員や保護者や支援者である大人が、マジョリティー(多数派)特権を持っている子どもに、「計算機の使用」や「タブレットの利用」など、「その子どもに使用するのが必要な理由」に関して、事前に合理的配慮が必要な子どもと話し合い了解を取った上で、しっかりクラス全体に説明をすることです。「クラスの生徒はみんな『得意な部分』と『苦手な部分』を持っている。今は⚫︎⚫︎君は計算機を使うことが、みんなと一緒に学習をしていくためには必要です。でも、みんなも、もし、『苦手なこと』で苦しくなることがあれば、遠慮なく先生に教えてほしい」というような感じです。

そして、先生自身がマイノリティー特権を持っているということを自覚することも大切です。その意識がないと、発達障害などマジョリティーのお子さんの苦痛を見逃す可能性があります。

学校や地域でできること

2022年の文部科学省の調査では、公立の小学校から高校まで通常学級で発達障害等で特別に支援が必要な生徒がに、8.8%在籍しているという全国調査の結果を公表しました。実に10人に1人は、40人クラスでは約4人位にあたります。2012年の全国調査では6.5%(この調査時は高校は行っていない)なので10年間に、2.3ポイント上昇したことになります。

発達障害の発症率が増えていることは医学的にエビデンスがあるのは間違いないのですが、なぜ発達障害の子どもたちが増えているのか、根拠となるエビデンスはありません。

ただ、私たちが学校や地域でできることは、「人には得意不得意が必ずある。その程度によって現在の社会的の中で、合理的配慮が必要かどうか?」を親や教員、支援者が今一度自身で確認し、子どもたちにしっかり伝えていくこと。また、様々な専門家が横の連携を持って子どもや保護者の支援を行うことが大切と考えています。

ヴィストカレッジでは、「保育所等訪問支援サービス」を富山エリアで実施し、地域の学校や保育園・幼稚園などと連携するサービス、放課後等デイサービス・児童発達支援でも「園との連携」「学校との連携」に力を入れております。

もし、子育て中に不安を感じられる保護者の方、学級運営や園での子どもとの関わりにお困りの方は、ヴィストカレッジにご相談ください。

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【引用】
2021年 出口「みえない『特権』を可視化するダイバーシティー教育とは?」青弓社
2022年 文部科学省 「文部科学省調査」
2012年 文部科学省 「文部科学省調査」

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