犯罪歴のある障害者・高齢者を対象とした地域移行支援で必要なこととは?【石川県地域生活定着支援センター・安田さんに聞く】
令和3年の雇用障害者数は実雇用率ともに過去最高を更新していますが、まだまだ就労を希望していても困難な状況に陥っている人も少なくありません。特に犯罪歴のある高齢者・障害者においては就労以前の課題も大きいです。
今回は、石川県地域生活定着支援センターを訪問し、たくさんのことを教えていただきましたので、ご紹介します。
石川県地域生活定着支援センターとは
刑務所等の矯正施設等からの出所(出院)予定者や、刑事司法手続き段階にある被疑者等で、 居住場所がなく、頼れる身寄りがいない又は家族等の事情により受け入れが困難であるため住居が確保できないなど、社会復帰が困難な高齢者及び障害者の社会復帰を支援するため、 保護観察所と協働して早い段階から調整を行う専門機関です。
どうして罪に問われた方を支援するの?
社会には、本来福祉サービスが必要であったにも関わらず、福祉につながることができずに罪に問われた高齢者や障害者が大勢います。
そのような人たちの中には、頼る人がおらず、仕事や住む場所もなく、必要な福祉サービスへのつながり方も分からずに困窮し、定住できないまま再び罪を犯してしまい、矯正施設へ戻るリスクが高いという実態がありました。
また、刑務所等の矯正施設に入る前(被疑者・被告人段階)や入所中に適切な支援を受けていれば、 こうした人たちが再び罪を犯してしまう不幸や、新たな被害者を生み出す不幸を防ぐことができるかもしれません。
石川県では社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 石川県済生会が生活困窮者を支援する事業の一環として、平成30年4月1日から石川県より委託を受けられ、事業の運営を行っておられます。
犯罪歴のある障害者・高齢者支援において必要なこととは?
地域生活定着支援センター副センター長の安田さんに、犯罪歴のある障害者・高齢者の支援において必要なこと3つを伺いました。
1. 本人の考えを尊重しながらご自身で気づいていただくこと
自身が置かれている状況を把握できていないことが多くある。
そのため、時間はかかるが、きっかけを与えて本人が考えやすくなるようにすることが必要である。そして、本人がどうしたいのかという意思がもっとも重要であるという考え方から、自己決定できように促すことも必要である。
2. 家族支援が必須
必ずしも家族(身寄り)がいるとは限らないが、少なからず家族(身寄り)がいる人には、家その協力が何よりも本人の力になることもある。
そのことから、障害者や高齢者の抱える困難は、まず社会的な仕組みによって受け止めた上で家族の生活全体を支えることが望ましい。
本人の社会復帰のためには、家族相談・家族による協力が重要な課題となっている。家族支援を行っていくためには、本人以外にご家族・関係者のアセスメントが必要である。そして、アセスメントに基づいた支援により家族の負担を軽減し、孤立しないようにしていく必要がある。
※アセスメントとは、社会生活上の全体的な観点から利用者のニーズを把握するとともに、ニーズを充足する方法及び社会資源の検討を行うこと。
3. 偏見にさらされてきた本人にとって居場所の確保が必須
周りの理解不足などで必要な福祉サービスも受けられず、居場所がないことで孤立を生むことで再犯のリスクは高くなる。特に高齢者や障害者には、その傾向が強い。
そのための居場所は、生活の基盤とする場所と活動ができる場所が必要である。
特に就労意欲がある人には、就労場所での役割が本人にとってのやりがいや生きがいとなり、本人の強みを伸ばしながら、苦手を克服することにも繋がる。また、就労場所が家族的な雰囲気を感じられる場となることもある。
意見交換会も行いました
意見交換会では金沢市役所の就労支援員さんも交えて、地域移行支援の難しさ、就労支援の課題など様々なことについて議論することができ、とても有意義な時間となりました。
地域生活定着支援センターに繋がり、ようやく支援の手が届いた方でも、犯罪歴があることで受け入れ先の確保が難しい場合が多く、支援をする側の理解も重要だと感じました。
ご本人の生きがいに大きく影響するのが『働く』ということ。
出所後に就労定着した事例をみると、いきいきと働いている方がたくさんいらっしゃるようです。
働いて地域の中で活躍することが、その方にとってどれほど重要なものか理解が深まりました。
ヴィストでは今後も地域の様々な機関と連携していきます
地域生活定着支援センターでは、社会復帰が困難な高齢者及び障害者の方々に対して、再出発のお手伝いをされています。
釈放後直ちに福祉サービス等を利用できるようにするため司法と福祉と連携し、その架け橋となり、生きづらさに寄り添い支援を続けられています。
ヴィストのミッションである「あらゆる人に働く希望を、 心豊かなStoryを」の実現のためにも、今後とも地域生活定着支援センターをはじめ様々な機関と連携していきたいと思います。
地域のニーズに答えられるよう、支援者同士がお互い顔の見える関係づくりから始め、『働く希望であふれる社会』を作っていきたいと思います。
[引用元・参考文献]