【社労士監修】障害年金は働きながらでももらえるの?気になる疑問にお答えします!
就労するにあたって、悩みや不安は人それぞれにあると思います。
例えば、「就労は訓練で不安を解消してからしたい」と思っても、「まずは生活するためのお金が必要」ということもあるのではないでしょうか?
障害のある方が利用できる制度は様々なものがありますが、今回は障害年金についてお話しします!
障害年金とは
一般的に「年金」といえば65歳以降に受け取れる「年金」、つまり老齢年金を思い浮かべる人が多いと思います。
障害年金は、病気やケガなどによって生活や仕事が制限されるようになった場合、一定の基準を満たしたときに支給される年金です。
公的年金制度とは
まずは年金という制度そのものについてお話しします。
年金は「国民年金(基礎年金)」と、「厚生年金保険」の2階建て構造からなります。
1階部分の「国民年金(基礎年金)」は、国内に居住する20歳から60歳未満全ての方が被保険者で、65歳になれば加入期間や支払った保険料に応じて国民年金(基礎年金)を受け取れます。
会社員や公務員の方などは、これに加えて、2階部分の「厚生年金保険」に加入します。
国民年金(基礎年金)の上乗せとして過去の報酬(給与)と加入期間に応じた報酬比例年金を受け取ることになります。
また、国民年金(基礎年金)を受け取るためには、原則として保険料を納めた期間と免除・猶予された期間を合算して10年以上の加入期間が必要です。
障害年金についても、国民年金・厚生年金の加入及び保険料の納付が大いに関係してきます。
2階 | 厚生年金保険 対象:会社員や公務員が加入 加入者は納めた保険料に応じて基礎年金に上乗せ |
1階 | 国民年金(基礎年金) 対象:国内に居住する20歳から60歳未満の全ての方 |
障害年金はいくらもらえる?
初めて病院を受診した日(初診日)にどの制度(国民年金か厚生年金)に加入していたか、障害の等級、18歳到達年度末の子の有無、65歳未満の配偶者の有無により金額が違います。
また、厚生年金の場合は、「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金保険」の2階建て構造のため、同じ等級でも納めた厚生年金の金額によって、最終的な金額が変わります。
障害年金3級は厚生年金保険部分のみ受給できます。
1年あたりの支給金額
障害年金1級(基礎+厚生年金)
基礎年金:約97万円(+子の加算) + 厚生年金:(報酬比例の年金×1.25)+配偶者加給年金
障害年金2級(基礎・厚生年金)
基礎年金:約78万円(+子の加算) + 厚生年金:報酬比例の年金+配偶者加給年金
障害年金3級(厚生年金)
厚生年金:報酬比例の年金のみ。(最低保証 月額約5万)
1級 | 2級 | 3級 | |
障害厚生年金 | (報酬比例の年金×1.25) + 配偶者加給年金 | 報酬比例の年金 + 配偶者加給年金 | 報酬比例の年金 |
障害基礎年金 | 約97万円(+子の加算) | 約78万円(+子の加算) | なし |
余談ですが、老齢年金の場合、20歳から60歳までの保険料を満額納めると、基礎年金部分は1年で約78万円となり、子の加算を除く基礎年金部分においては障害年金2級と同額になります。
どうしたら受給できる?
障害年金は障害の診断を受けただけでは受給することはできず、自分から申請しないといけません。
また、受給のための要件もありますので、よく確認しましょう。
受給要件
1.初診日の確認
診断された傷病について初めて病院を受診した日を確認しましょう。「受診状況等証明書」という書類を発行してもらう必要がある場合もあります。
そして、障害年金を請求できるのは、初診日から1年6か月が経過してからです。この1年6か月が経過した日のことを「障害認定日」と言います。
「なぜ1年6か月も待たなければいけないのか?」と疑問が残るかもしれませんが、1年6か月経過することで、「症状が固定化した」と判断されるためです。
例えば、「うつ病」と診断されたとしても、1年6か月以内に症状が改善する場合もあるため、この期間が設けられています。
また、初診日が18歳6か月より前であれば、障害認定日は「20歳の誕生日の前日」になります。
それ以降、例えば初診日が19歳0か月であれば、障害認定日は「20歳6か月」です。
ただし、手足の切断や脳出血によりマヒが残った場合など、「それ以上は改善が期待できない場合」はこの限りではありません。
傷病により障害認定日が異なるため、申請する際には確認が必要です。
2.国民年金保険料の納付要件
国民年金の保険料を一定期間以上納めている必要があります。
国民年金保険加入(20歳の誕生日)から初診日の前日までに、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
1. 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。
2. 初診日において65歳未満であり、初診日のある前々月までの1年間に保険料の未納期間がないこと。
※20歳以前に初診日がある場合、国民年金保険料を納める義務がないため、納付要件は問われません。
申請方法
1. まずは障害年金が受給できる病状であるか、主治医に相談することをお勧めします。
等級の判定は医師の作成する診断書に基づいて行われます。
そのため、障害特性による生きづらさ、働きづらさについて、医師に適切に伝えることが重要です。
特に、知的障害や精神障害を伴わない場合の発達障害は、ことさら重要になります。
また、初診日の確認において、「昔のことで初診の病院がどこか忘れた」という場合でも、 病院のソーシャルワーカーに相談すると、可能な限り遡って確認してくれます。
2. 申請に必要な手続きは年金事務所で行います。また、保険料の納付状況も確認できます。
必要な書類については、医師の診断書や受診状況等証明書など、全ての方が必要な物のほか、 戸籍謄本などが必要な場合があるなど、それぞれの状況で違ってきます。
働きながらでも障害年金は受け取れる?
結論から言うと、就労=不支給とは限りません。就労の状況によっては働いていても支給されるケースがあります。
ただし、しっかり働けている場合は支給がストップしたり、等級が2級から3級になったりすることがあります。
申請の結果、不支給になってしまった方へ
年金受給の要件を満たしているのに、病状が基準に満たないために「等級が思ったより低い」、「支給されない」ということもありえます。
その場合、病状が悪化したときに再度申請することで、支給される可能性があります。
しかし、「病状が基準に満たない」ということは、逆の見方をすれば、「働く力があると公的に認められた」ということです。
希望通りにならなかったことは残念ですが、働く力があるとお墨付きをもらったことに自信を持ってみてはいかがでしょうか。
障害年金のまとめ
最後に、これまでお話ししたことをまとめます。
1. 年金額は等級と厚生年金保険の加入状況で変わる。
2. 受給するためには、年金保険料納付などの受給要件を満たす必要がある。
3. 働きながらでも年金が支給されるケースがある。
4. 病状を理由とした不支給判定は、働く力を認められた証拠である。
申請は一人で行おうと思うと、確認事項や作成する書類も多く、とても大変です。
通院している病院スタッフや年金事務所、ご家族に相談し、焦らず手続きを進めましょう。
[引用元・参考文献]
「国民年金保険・厚生年金保険 被保険者のしおり(日本年金機構)」
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/seido-shikumi.files/LN13.pdf
[監修者情報]林 由希
ラクシュミー社会保険労務士事務所 所長。社会保険労務士。私たちラクシュミー社会保険労務士事務所は、相談者の皆さまのガイドでありたいと思っております。
周りで起きていることを正確に相談者さまにお伝えし、ともに悩み、相談者さまが目指す幸せの実現のために並走し、必要なサポートをさせていただいています。